【小説】SNSの悪夢
「奥さん、聞いてますか??」そう言われてハッとした、今は考え事をしている場合じゃ無いのだ。
「ハイ、すみません。」聞いて居なかったとは言えないな。
「ご主人が仰っていたのは、結婚前に仕事が大変だと無口になったりすると言うのは、奥さんにお伝えしているって事だったんですけど。」と聞いてくる。
「ええ、ハイ、そんな話もありましたね。」嘘は本当にスパイス程度入れるのが良い。
「じゃあ、奥さんも納得して結婚したのに、モラハラってね~、先生。」女性の調停員が男性に同意を求めている。
拙いな、私の我儘と感じられるじゃないか。
「そうですねー、でもまあ感じ方は様々で、思ったよりも話をしなかったとも考えられますからね。」と話を振られ男性が言葉を出す。
「一般的な話ですが、何日も口を利かないってのは、一緒に住んでいる者にとっては物凄く精神を使うものなんですよ、そう思いませんか??」私が答える前に弁護士さんが話してくれる。
調停員さん2人が不思議そうな顔で目を合わせている、納得はして無いというのだろう。
「旦那さんがね、結婚する時に仕事に集中して居たら、口利かなくなるって言って於いたって仰ってるんですよ。」女性の調停員が口を開く。
「それは解っていたんです、でも家で話も出来ない、週刊誌で不倫が報道されるじゃ、信頼出来なくなってしまうでしょ。」自分で反論をする。
「信頼感が持てなくなったら、もう一緒に住めないですよね。」調停員を下から見上げる様にして、言葉を続ける。
「そうですねー、奥様の言っているのも良く分かるんですよ、でもね旦那さんがそれには反論しているんですからね、私達としては、ねえ先生。」女性の調停員が横の男性の調停員に同意を求めている。
「私としては旦那さんの言い分も奥様の言い分も解かるんですよ、これって結局は離婚に向かっていると思って良いんですか?」男性の調停員は早く終わらせたい様だ。
「そうですね、2人とも離婚したいというのでは、意見は一緒なんですよね。」女性の調停員も頷きながら話す。
「後はお金の事だけですよね、旦那さんは名誉棄損で慰謝料が欲しいようですし、結婚してからさほど経っていないから、財産分与も無しと仰っているんですけど、それが納得できないんですよね。」
勿論、こっちは別に不倫したって訳では無い、名誉棄損って言われても、もう既に週刊誌で書かれているのに。
「慰謝料と言われても、週刊誌で書かれていたから、SNSで批判しただけですよね。」自分の弁護士が言う。