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【小説】相棒との時間

『ごはん、ごはん。』ユキの朝はいつも遅いんだよね。

もう起きる時間だよ、ちょいちょいっと、突いてみる、起こさなきゃいつまで経っても起きないでしょ。

「もうちょい寝かせてー、まだ5時前だよ。」声が聞こえる、でもお腹空いたんだもん。

ちょいちょい、起きてよ、そろそろ時間だよ、何でいつも起きてくれないのかな。

『ごはん、ごはん。』もう一度、あれっ、また寝ちゃったの、僕はお腹が空いてるのに。

起きるまで、ちょいちょいするぞ、『起きてよ、ねえ。』起こしてあげないと、寝ちゃうもんね。


チャリチャリチャリ、朝の音が聞こえる、猫が歩くのに気付くために、付けた鈴だ。

偶に音が聞こえないのは、意識すれば鈴を鳴らさない様に歩けるんだろう、だけど朝はわざと音を出しているんだ。

まだ5時前だから、起きるには早い、私はまだ寝るよー、無視して布団にもぐり込む。

頭をごつごつしてくる、「もう一寸寝たいよ、人間に5時は早すぎるんだよ。」そう説明するが、関係ないみたいだ。

「分かったよ、起きるから。」この子しか居ないのに、大きな声で話している。

お隣さんに聞こえていたら、同居している人間が居ると思われそうだ。

起きると、シッポをぴんと立てて、キッチンに歩いていく、お前も来るだろって言いたげだ。


この子が来てから、私は早起きだ、元々早寝早起きを信条としている訳じゃない。

出来ればダラダラして居たい、動物を飼うとそうはいかないんだよね、それが解っていても、何故かお迎えしたくなるんだよね、猫って。

この子はペットショップの端のゲージに居た。

「この子は如何してここに居るんですか?」聞いてみた。

「生まれて半年売れなかったから、同業者に安く売ろうかと思って。」人間が勝手に命に値段を付けて、売れないと安くしたりするんだよね。

「私、飼います。」思わず言葉が出た、店員さんが不思議そうな顔をして、「もうこんなに大きいけどいいんですか?」横には子猫のゲージが或る。

頷いて、命の値段を払う、結構高いからローンだ。

ローンで命を買うって変だけど、今の自分にはこれしかできない、猫用品も買いこまないと。


一人暮らしが動物を飼うと、婚期が遅くなるよとか、諦めたのとか人は言ってくる。

それを否定はしないよ、だって結婚と比べようが無いからね、動物を飼うって事は。

「ニャー。」と鳴いてくる、考え事していたのを見透かすみたいだ。

「ご飯なんだよね。」話しかけてみる。

目をキョロキョロさせて、何言ってんの、ごはんに決まってるでしょって顔、この顔が好きなんだよね。

私の朝の癒しやね、ずっと居ようよ、相棒。

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