【小説】恋の幻想
「お兄さんが問題だったんだ、そうでしょう。」と裕子さんが話を進めてくる。
「そうです。」と言って考える、何処までいったらいいんだろう、人間には誰にでも話したくない部分が有る。
この二人はそこは解ってくれそうだ、「兄と言っても一緒に育ってきたわけでも無いし、血縁でも無いんですけど。」
「だからこそ問題は多いでしょ、お父さんとお母さんは気を使ってくれなかったの?」と裕子さんが言う。
「あの二人は私に出て言って欲しかったみたいです。」そう言ってゆっくりと息を吐いた。
「何か言われてたの?」また裕子が話し出す、ちょっとお節介なところが有るのかもしれない。
「お節介が過ぎるぞ、言いたくない事もあるだろう。」と良平さんが口を出す。
二人で丁度良かったんじゃないのかな、何故婚約破棄しちゃったんだろう、そう思ったら声に出る。
「二人は何で婚約破棄したんですか?」関係ない話をして煙に巻こうとしてると思われたかもしれない。
「ほらな、人の事をいろいろ聞いてたら、自分達も聞かれるんだよ。」と良平さんが裕子さんの顔を見ている。
「私たちの事も話すよ、人に聞いといて自分はプライバシーがなんて言わないから。」と裕子さんがこっちを見る。
「ごめんなさい、仲がよさそうだから、何でなのかなって思っちゃって。」と言う。
「ごめんなさいはそろそろやめた方が良いよ、謝る事なんて何も無いから。」と良平さん。
「でも来ただけでご迷惑かけているんですよね、そう考えるとごめんなさいしか出てこないです。」と返す。
「違うよ、こっちが来たらどうって言ったんだから、気にしないで欲しいな。」と良平さん。
「それより、私たちの事だけど、結婚するってなった時に、この人フリーランスになるって言ったんだよね、結婚するっていう時に安定しない職業選ぶのは問題でしょ、指輪は返すって言って、それからは勝手に私がここに来てるの。」当たり前の様に言っている。
信頼関係って難しい、それでも一緒に居る人も居れば、駄目だっていう人もいるんだ。
「それからは、相手が誰と付き合っても、文句は言わないって感じで有ってるんだよね。」と裕子さん。
「文句言ってくるだろ、俺が付きあうとなると、絶対に相手と別れさせるじゃないか。」
「それはね、相手が問題のある人間だったからなんだよ、私は見る目が有るから女を見てやっているの。」ちょっと大きい声で裕子さんが言っている。
フフッと笑った、声を出して笑ったのは何時ぶりだろうか、ここでは笑えるんだ。