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アートは高いのよ

結婚するのに、大体の人は紹介という形を取ると思う。

人に依ってはもっと違う形も有るかもしれないが、私の場合は知り合いの紹介だった。

その方は、私にとっては親がPTAで一緒に仕事をしている近所の奥様で、元夫にとっては隣の会社の社長の奥さんになる。

その頃、元夫は既に30回以上もお見合いをして、断られていたので、また断られるのだろうなと思いながら有ったと後で聞いた。

私は短大卒業間近で彼は30過ぎていたので、早く早くと返答を急かされた記憶がある。

離婚したものの私は、何でも良い経験だったと思う方なので、紹介して貰った事には感謝している。

元々、母親のPTA仲間で、よく知っていたので、会社に来られたら話をする。

夫としては、『あの会社は障碍者を使って、人件費を安く済ませている。』という感覚があったらしい。

それでも、私達の会社では出来ない事なので、凄いな~とか考えていた。

私は障碍者雇用に対しては、何も知らなかったので、社長が来られると話を聞いて見聞を広めていた。

その会社には寮の様なものが有って、そこで生活を共にしていて、そこから会社に通ってくる形をとっていた。

或る日、社長さんが愚痴を言いに来ていた。

「うちの子らが、寮からここまで歩いて通っているんやけどな、近所の人間が嫌がるんや。」

そうか~、そんな人も居るんかもしれないな。

「寮からここまでバスかなんかで運べって言うんや、でもなあの子らはずっと寮で生活するんとちゃう、買いもんに行く事もあれば、ここを出てもっと収入の良い職場に就くかもしれん、その時に道路を渡るのも出来んだらいかんやろ、別に悪い事はせん、危ないで付いてる人間も居るし。」

どちらの言い分も良く分かる、人間解らない物は怖いのだ、でも解ってみるとそうでもないと考える。

理解の問題なのかも知れない。

「バスで送り迎えする方が簡単やけどな、親御さんが『うちの子色々出来るようになって』と言ってくれてるから、それで良いんか悩むわ。」

それは仕方の無い事なのかも知れないが、切ない話やな。

人間頭の中は解らないから、人に依っては普通ににこやかにしていても頭の中は怖い考えで一杯って事もあるし、その反対も然り。

理解すると言うのは、自分で理解しようとした人にしか出来ないものなのだなと思う。

そんな事もあって、私も障碍者について勉強して、話を聞くようになっていった。

また、社長が愚痴を話しに来た、その時は2人部屋の仕切りにカーテンを着けようとお金を貯めていたら、使い切っていないと補助金を減らすと言われたとの愚痴だ。

そうか~、補助金が無いと運営は難しいけど、使い切ってしまわないと補助金減らされるのか。

難しいもんだけど、その頃障碍者を納税者にという掛け声のもと、障碍者の雇用に考えているグループがあると知って、社長に聞いてみた。

「昨今では、障碍者を納税者にって方向で仕事を考えている人たちも居るようなんですけど。」

その言葉に少し驚いた顔をして、その社長がこう言った。

「障碍者を納税者に??ナイナイ、そんなもん、納税できるのやったら障碍者や無いやないか、それやったら誰も苦労せんわ。」

ずっと昔から障碍者雇用をして、寮も作って、彼らがもっといい職場に行けたら良いと思っていても、こうなのだな。

障碍者雇用の難しさを感じたし、結局は補助金が無いと運用できないのだなと考るようになった。

NOTEで書いたり読んだりしだして、障碍者といっても色々な人が居て、その中には充分な納税者も居る。

だけど、殆どは国の補助金で運営している会社で仕事をしている。

それが悪い訳では無いが、きっと障碍者でももっと稼げる人は居るだろうし、事業的にお荷物扱いが多い。

ヤッパリ仕事として、安定はしないものなのだなと、少しガッカリしたりもしている。

ヘラルボニ―という企業がある。

この企業は他の方も沢山紹介しているので、私が話す事も無い位だが、障碍者の作品をアートとして昇華させて、そのデザインを企業的に売っていくと言う会社になる。

服や傘などのデザインの外にも色々な企業とコラボレーションしてアートを商品化して売っていく。

新しい考え方の会社だ。

勿論、障碍のある方が全てデザインが出来る訳では無い。

それに、絵が描けても、それがすなわちアートとは成らない。

しかしながら、この会社に所属する作家は、作品をIPライセンシング化されて、商品が売れると還元される。

そうなのだ、補助金が事業所に入ったとしても、そこに居る従業員の障碍者には月額1万5000円程度しか手に入らない。

その事業所を永続して行く為にそれが必要で有っても、何となく納得のいかない金額に為っている。

そう考えると、障碍者がそのライセンシーで、納税者になる世界は、本当は私達が望んでいた世界なのかも知れない。

人はよく「障碍者なんて、社会のお荷物だ。」という言葉を口にする。

そんな人に限って、障碍者が納税者になる仕組みなんてちっとも考えたりしていない。

ヘラルボニ―のビジネス(そう言って良いのか良く分からない??)はそこを考えて、ある一部の他人では在るけれど、納税者にする仕組みを作った。

いい会社だなー、ヘラルボニ―の商品を買いたいなと思ったら、高くて手が出せない私です。



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内山祥子
文を書くのを芸にしたいと思っています。 頑張って文筆家になります。 もし良かったらサポートお願いします。 サポートしていただいたら本を買うのに使います。 ありがとうございます。