【小説】SNSの悪夢
免許更新以外で警察なんて行くと思ってなかったから、何だかドキドキする。
夫が捕まるなんて思っていなかったから、こっちは如何すればいいんだろう。
ネットで調べると、弁護士が必要らしい、警察に行って必要なら何処かに頼もう。
これまで弁護士なんて必要なかったから、知り合いに居るのかどうかも分からない。
ネットで頼むべきなのかな??
「あの清水と言いますが、夫から連絡が着て、捕まったと言われたんですが、会わせてもらえませんか?」
警官はさも同情的な目をして、少し微笑んでいる、何だろう何が有ったんだろう?
「残念ながら現行犯逮捕なので、ご家族は会わせる訳にはいかないのです。」
折角来たのに、夫には会う事が出来ないらしい、別に何か言い合わせたりしないんだから、会っても良さそうだが、そんな訳にはいかないらしい。
「夫はいつ帰ってくれるんですか?会社にも連絡しておかなくてはならないので。」今度はそう聞いてみる。
「現在取り調べ中なので、ハッキリした日時は申し上げられないんですよ。」丁寧だがきっぱりと話す。
「どうしましょう?」思わず声に出る、自分が何をすれば良いのかまるで分からない。
「家で待ってればいいんじゃないですか。」警察官が言う、家に居られないから来ているのに。
「弁護士なら面会は出来ますけど、ご家族はね。」優し気に教えてくれる、やはり」弁護士なのか。
「あのー、夫が何で捕まったのか聞いても良いですか?」聞いても問題解決は無いが、聞いたら何か光明がありそうな気がしていた。
「痴漢ですね。」エッ、痴漢で逮捕ってされるの?初めてのことに戸惑って何も言えない。
「痴漢ですか、それで捕まっちゃうんですね。」思わず声に出た、もしかすると間違いかも知れない。
「痴漢は犯罪ですよ、あなたも女なら解るでしょう、電車で動画撮影していた人も居て、証拠としては確実なんですよ。」声が少し厳しさを帯びる。
「すみません。」自分がした事では無いのに、謝るのは不本意だったが、ここでは他にする事は無い。
「じゃあ、帰ります。」慌てて出てきたけど、結局は何もできない、家に帰って考えよう。
痴漢なんて沢山いて、そこいら中に被害者って言う人が居る、チョット触られた位なんだと言うのだ。
私はスーパーで気持ちを侵されている、そこは罪じゃ無いけど、少し触ると罪になるのは、何だか解せない。
何日も会社を休んだら、仕事はどうなるんだろう、自分のパートでは生活できない。
不安だけが渦巻いていた。