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【小説】恋の幻想
裕子さんが話をして帰っってからも、私たちは付き合い続けた、恋愛に覚悟なんて要らないんじゃないか、私達二人ともそう思っていた。
「余計なお世話なんだよな、裕子って自分は覚悟なんて無いのに、人には言うんだよな。」と裕子さんが帰った後で良平さんが言っていた。
「私は覚悟が居るって解って良かった、何時だって覚悟なんて無く生きてきたから。」と呟く。
「高校生くらいで覚悟を持って恋愛しろって無茶なんだよな。」自分の体を触りながら、答えてくれる。
体を触るのは癖みたいで、話していると、腕や胸を触ったりしている、それを見て他の人の知らない癖を見つけたみたいで嬉しがっていた、裕子さんは知ってるかもしれないけど。
恋愛に覚悟は居るのかな、結婚なら居るかもしれないけど、結婚は長期間のギャンブルなのだから。
それに対して、恋って自分たちの気持ちだけだから覚悟は要らない、要るとすれば体を合わせる時だけだ。
問題は私には良平さんが好きに為ってくれて居るのかが解らなかった事だ、裕子さんが言う様に、彼が流されやすいから一緒に居るのなら、嫌がっているのかも知れない。
残念ながら私は恋愛を知らない、一緒に居たくて堪らない気分や見つめて貰いたいなんて気持ちが無かった。
その意味では拾ってくれた人に懐いている動物なのかも知れない、良平さんも体を求めたりしなかったから、きっと子犬を可愛がっている感情なのかも知れない。
こんな考えを持つのは裕子さんが注入していった毒が、回ってきたのかも知れない、疑惑という毒が。
母親が死んでからは考える時間が無かった、あなたはこうしなきゃダメなのと言い続けられると人間はそれに従うようになる。
子供は一緒に生活する人に洗脳される、お前が駄目なんだと言われれば、自分が駄目で、いい子だと言われれば自己肯定感が上る。
そして私は自分を良く感じる術を知ってはいなかった、古い記憶の母の言葉だけが私が生きるのを肯定してくれる言葉だった。
父と二人だけで生活していた時間は短くて、幼くても家事をせねば為らない、あ俺が悪いとは思わなかった。
ある日父がお母さんが出来たよ、お前も子供らしく出来ていいな、と言ってきた。
父が結婚して母親が出来て子供らしくなったかと言えば、そうでは無かった、でもそれが大きな問題では無いのに気付いていた。
問題は母と一緒に来た2つ年上の兄だった、最初は優しい兄が嬉しかった、母よりもずっと優しかったからだ。
それがああなるとは思わなかったのだ。
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![内山祥子](https://assets.st-note.com/poc-image/manual/preset_user_image/production/ic3fd94079689.jpg?width=600&crop=1:1,smart)