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物は大切に

服を売ろうと思った。

昨今の情勢で世間では2年着なかった服は売るとか、パリジャンは10着を着回すとか言って、服を減らす方向にある。

そうか売った方が良いのか。

自分の服を見て思った、よく考えると何年も来ていない服も有る、大事に何かあった時にと取っておいた服は、何も無いままワードローブの中で出番を待っている状態が続いている。

やはり売る必要がある、まあ売ったからと言って、大きなお金にはならない、でもゴミに出すよりは役に立つ、自分の為にも、人の為にも。

そう思うものの、買った時には思い入れを持って買っているので、簡単には売ったり捨てたりできない。

自分の優柔不断さに嫌気がさす、キッチン用品と服は手放せないのだ。

若い頃から服は好きだ、着道楽と言っていい、20代や30代は出産、子育てと服を楽しむ余裕は無かった。

40過ぎて子供もある程度大きくなって、自分の給料も少し増やして貰って、服を買いたいと考えた。

洋服買いた~~~い、洋服買いたいボークはネットの洋服を見る~、という感じで余り出掛ける時間も取れなかったので、ネットショッピングをしていた。

その頃のネットショッピングはサイズ表記が雑で(今もそんな店があるみたいだけど)書いてある数字とは全然違うサイズが来たりした。

それでも、返品不可だったり、返品が面倒だったりして、随分勿体無い事をしたかも知れない。

その中でこれは持って置きたいと思ったものが、今のワードローブにはある。

だから、どれを売るとか言うのが難しい、2年着ていなくても、3年目に着たりもする。

それでも、着ない服は売った方が良い、もう少ししたら引っ越す三女に話してみる。

「服売った方が良いよね。」ここは聞く気はない、求めているのは同意のみだ。

「僕も売った方が良いよね。」2人でワードローブとにらめっこしている、だってね2人とも着ていない服を持ちすぎているんだよね。

「僕もさ、痩せたら着ようと思っていたけど、その時にはまた買いたくなるんよね、だから売るわ。」ここ数年で体重爆増の彼女が言うのは解かる。

大体人間は痩せたら着ると思って服を取っておくのだ。

私の場合はそこ迄の体重の増減は無い、だけど何年も前のは今の自分の気分かと言うと、確実に違っている。

今日は2人で服を出して見た、結構な量が有って、こんなに有ったのかと感心した。

昔UNIQLOの店が初めて開店した時には、中国の人民服やの、制服が嫌いなのに制服を着るのかとか意見が有ったが、今はUNIQLOさえ贅沢と思ってしまう位チープな服が一杯有って、何だか違いを感じるなー。

私の短大の時代はバブルが弾ける前で、私みたいな普通のサラリーマン家庭の子でも、親の手取りはある程度あったから、弟がいても短大に行くことが出来た。

短大はお嬢様大学だったので、制服は有ったが最初はコートの指定が無くて、毛皮を着てくる人が増えすぎたので、学校から毛皮は華美なので止める様にと御触れが有った。

それでも私の神戸の友達は、「神戸って寒いんよ、だから内側が毛皮で外は普通のコートに見えるのを着てきてるの、ほら。」と言って毛皮を見せてきた。

「毛皮が駄目って聞いたけどええの?」そう聞き返すと、彼女はこう答えたものだった。

「華美に見えるからあかんのやろ、外見上普通のコートの見えたら解らないし、脱いだ時も毛皮が見えない様にしたらええんよ。」

わ~、お嬢様やな~、毛皮とは遠い所で生きてきた私は思ったりした。

それもバブルが弾ける前、阪神淡路大震災も未だ起こっていない時代なのだから、今は彼女は如何しているんだろうな。

イカンイカン、服で昔の思い出に浸ってしまった、でも服が好きだと言っても、既にその頃の服は無い、服の寿命って短いんだなと思ってしまった。

「服ってさ、寿命短いよね、SDGSを考えたら、もっと大事に使わんとね。」娘に呟く。

「それでもお母さんは物持ちがええ方やん、保育園の入学式の時に来とった服を高校の入学式に着てきたのは驚いたわ。」三女が言う。

最初の子の保育園入学時に、ずっと使えるからと言って数万つぎ込んで買ったスーツがあったよね、あれは三女の高校入学式でも着たんだから、よう持っとった。

「それにさ、結婚した時に持ってきたって言うお玉、ついこの間までつかっとったやん。」

あああの結婚した時に母親が持たせてくれたお玉ね、知らんけど農協って入って居て、我が母も何処かで貰ってきたんやろうなと思いつつ使ってたのね。

そうだね、あれは20歳に結婚して、去年壊れて捨てたんやから、長いこと使っとったんやな。

その物持ちが物を増やす要因になるんだよね。

物を大事に使いましょう、って育てられてきた時代の人間からすると、100均で買って失敗やったから捨てるのは勿体ないと感じちゃうんだよね。

100円と税が掛かってるんだもんね。

結婚して居る時に夫は物を買うのが好きな人で、捨てて新しくする事に躊躇いが無かった。

「勿体無くない?」と言うと「経済を回すためには物を買わな。」という理論を展開していた。

でも思い入れなく買って捨てるのは勿体ない、100円でもね、間違っているのかな?

今さっき、娘が服を売りに行った、大事な服がお金に為ると良いけど、そして誰かに又大事に使われると良いけど。

密かに思ったりしている。

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内山祥子
文を書くのを芸にしたいと思っています。 頑張って文筆家になります。 もし良かったらサポートお願いします。 サポートしていただいたら本を買うのに使います。 ありがとうございます。