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【小説】恋の幻想
「俺の家なのに占拠されるの、何か納得いかないな。」ぶつぶつ言いながら良平が外に出てゆく。
きっと2人にするのが不安だったり、危険を感じたりして居るのかも知れない。
私は裕子さんと2人だけで話をするのはちょっと嬉しい、ここに来た時に事情を聞いてくれて、仕事や家を紹介してくれたのは裕子さんだ。
それに聞きたいこともある、今でもまめに会う位仲がいい良平との婚約を破棄したのは何故なんだろう。
「邪魔者が居なくなったから、2人でご飯でも食べよう。」成人したとはいえ、お酒とは言えない歳だから、2人で食べながら話をするつもりだったみたい。
「邪魔って訳じゃ無いじゃないですか、酷いですよ。」良平の為に言って於く、言っても言わなくても変わらないけど、気持ちの問題なのだ。
「良平が好きなんだよね、良かった忍ちゃんが良平を好きに為ってくれて。」裕子さんがボソッと言ってくる。
「良かったんですか?裕子さんは良く来るけど未練とか無いんですか?また婚約しようとか思わないんですか?」質問ばかりが口を衝く。
良平と一緒に居る裕子さんは何も違和感なくて、私じゃ無く裕子さんと居た方が当たり前のカップルに見える。
良平はそれが解っていて、裕子とは友達になったからと言っている、友達って言葉は都合が良い。
「元婚約者でももう既に友達になって恋愛感情は無いんだ。」何度も良平から聞かされた科白。
何度も聞いて、頭には張り付いている、でもそれは取れやすいシールの様で、端を摘まむと、剝がれてしまう物だ。
信じているけど不安、信じたいけど疑念、は人間なら誰でもある感情だと感じている。
私が猜疑心が強いわけじゃ無い、そう思いながら結婚の手前まで来たのだ、裕子さんには聞かなくては。
「裕子さんは何故婚約破棄したんですか、条件も年齢も見た目もぴったりだと思うのに。」見た目で若すぎる自分を感じて言ってしまう。
哀しそうな笑みを浮かべながら、裕子さんが言葉を発している、理解してもらえない感情を押し殺している様だ。
「解らないから聞きたいよね、私はね、婚約破棄よりも何で婚約したのかの方が問題だったの、だって友人として好きってのは在っても、恋愛って訳じゃ無かったんだもん。」
「恋愛じゃ無かったんですか?デートとかしたんじゃ無いんですか?家に来ていただけだったんですか?」まだまだ質問の山になる。
「そうだね、良平は子供の頃から知っていて、自分の話なんてしなくても、分かってくれたから、デートなんてしていないよ。」
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