【小説】恋の幻想
朝が来ると人生が変わる訳では無い、それどころか問題を再認識したりする。
気持ちが目覚めると、毎日今日をどう生きて行ったらいいかと考えていて、どんよりした気分が溜まっていった。
今日は目を開けると部屋が明るくなっていて、いつの間にか眠っていたんだと気付いた。
夜を過ごして言葉を交わすと、古くからの知り合いだったような気がしているから不思議だ。
それにしても2人で布団を共有していた筈なのに自分一人だ、裕子さんは何処に行ったんだろう。
考えている場合じゃ無く起きて動かないと、いつもの習慣が自分を動かしていた。
起きて布団を畳むと、昨日着ていた服を触って、濡れているかどうか確かめる。
着るには問題が無い位の感じ、これだったらこのままこれを着て買い物に行って、新しい服を買ってこよう。
借りた服はコインランドリーで洗って返そう、頭の中にタスク書いていく、チェックは後だ。
さて何しよう、裕子さんは何処に行ったのか、見渡せる部屋の中には居ない。
ガタガタとドアが開く音がする、1人でいたからビックリしてそちらを見ると、買い物袋を提げた裕子さんがいた。
「取り敢えずご飯食べたいなって思ってさ、近所のコンビニに食べ物買いに行ってたんだよ。」明るい顔で笑っている。
「ありがとうございます、起こして貰ったら私が買ってきたのに。」申し訳なくてそう言うと。
「よく寝てたからさ、起こすのが勿体なくって、それに好きな物かって来れるからね。」なんだか嬉しそうだ。
「よく眠れたでしょ、人間寝たら大概の事には対処できるから、眠るのは良い事なんだよ。」そう言えば、ここ最近はゆっくり眠るなんてできなかった。
サンドイッチ、おにぎり、サラダ、スープ、こんなに食べるのかと考えている。
「これね2人分じゃないよ、良平が帰って来ると食べるから、多い目に勝ってきたの、自分で食べ物買ってきたりしないんだよね。」と裕子さんが笑う。
「1人暮らしで食べ物買わないって、無いんじゃないですか。」彼女の笑顔につられて私も笑ってしまう。
「そうだよ、笑った方が良いよ、笑うような状態でなくても、笑ったらきっと如何にか成る、私だけかも知れないけど、そう思っているんだ。」また笑う。
「そうですね、そうします。」当たり前の言葉が入ってきて、笑っていなかった今までの自分を叱り飛ばしたくなった。
二人で食べる為に机に袋から取り出した物を並べる、何食べたらいいんだろう、そう思っているとドアが開く。