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適正価格って何??

商売は儲からなきゃ続けられない。

それは自明の理である、会社が有った時にも、それは思っていた。

近所の奥様方は、お宅は経費使いたい放題で良いわねー、などと言ったりするが、使える経費があるならくれってな感じだった。(そんな事は言わんっけどね)

「ちゃんと消費税以外の税金も払える会社にしたいね。」何度も言ったことが在る。

私達の会社は何とかなると思うと、あかんとなる、まあ最後の方はもうあかんでしたけどね。

近所の人が考える、企業の経営者は経費使いたい放題なんて、税理士入れてんだから無いよ。

儲ける為に色んなことを考えたけど、1つだけこれはしないってのが有って、不適正価格で売る事だった。

そんなの当たり前じゃないかと云う声が上がりそうだ。

でもね、世の中に不適切な価格の物は沢山ある、高すぎるのも不適正だし、安すぎるのも不適正だ。

そもそも不適正な価格って何なんだ??

私が考える不適正な価格とは、会社にとって安すぎる価格と世間一般で考えて高すぎる価格だ。

考えると、企業として利益を求めるのであれば、高すぎるのは良いのかも知れない。

それは解っていても、原価と人件費を考えても、飛びぬけて高い価格を付けるのは気が引ける。(だから儲からなかったというのもある)

まあ、飛びぬけて高い値段が付けられるような業界でも、親会社でもなかったから、出来なかっただろうけどね。

大手は兎に角安く手に入れたい。

私達の会社は材料も自社調達で、材料費に人件費を乗せて見積もりを出していた。

或る日の事だ、親会社の担当から呼び出しが有った、歩いても直ぐの距離だったので、社長である夫が行った。

「何言われたの??」聞いてみる。

「俺んとこの品物が高いって言ってたわ。」夫が悔しそうに言った。

きっと値段が高いと言い出すだろうと思って、時給計算で1000円切る価格で計算したのにホンマに何考えとんの。

「これ以上何処を削れと。」と言うと。

「どうも材料が高いって言うんや、材料なんてこっちに選択権無いのに。」我が社は材料は大手、売り先も大手だ。

大手の材料をその子会社の商社から買っている。

だから、こっちには選択肢は無い、国内での流通が10パーセントに満たない材料で、自社調達できる企業は少ない。

その少ない企業の我が社が何を言えるか、なーんも言えんなのだ。

「そやから、それやったら親会社が材料仕入れて、うちに材料支給してくれって言ったんや、絶対に出来へんから。」特殊な材料だけに、実績が無いと取り扱ってくれないんだよね。

その時にはそれで納得したように見えたけど、その後大体の仕事は中国に持って行ったんだよね。

考えると厳しい世界で、チョット大きな企業は子会社を奴隷だと思って居るんじゃないかと思う。

それで、日本で奴隷が死にそうで悲鳴を上げると、もう駄目かーと海外に行く。

結局、機械を変えて生産効率を上げるよりも、安く使える人間が居る所に行った方が楽なんだよね。

もっとも、現在はちょっと違っていて、もうさ製造する人間が居ない、人不足でね。

きっと海外に進出した所は、下請けは潰れたり、辞めたりしているから、もう頼む所も無いだろうしね。

この所、YouTube動画で綿貫社長の動画を見ている。

この綿貫社長も元々は下請けで、おまけに仕事が海外に出ていって、今の様な状態にしたらしい。

羨ましい。

それでも、相当なご苦労が有って、今が有るのだし、SNSを上手く使ったから、良かったとも言える。

その点、我が社は鉄を抜くお仕事だったから、自社で作って売るというのが出来なかった。

夫に言ったことが在る。

「鍋とか金属の曲げ加工で何とか自社商品が出来ないの??」

この時の答えはこうだ。

「お前は簡単に言うけど、うちは抜きしかしてきてない、昭和36年から抜き一本や、曲げは曲げで技術が要って、簡単には出来へん。」

そうかー、出来んか。

「それにどんでけで売るつもりや、何処で売るんや?」

「ネットで売ったらええんちゃう、鍋やったら小さいのでも綺麗で使いやすかったら、1万円近くで売れるで。」

「俺はな、そんな人騙す様な商売できん、鍋なんて鉄の部分は1000円位やろ、騙しや無いか。」

ちょっと待て、研究開発して、自社で調達して、在庫も持って、その上でその為の人件費が居る、あかんのか??

「じゃあ、畑違いやけど、飲食したらええと思う、大体3倍値で出せるから、儲けは今より大きい。」

「その人員は如何するんや??」

「最初は私と娘がして、後で他人を雇って、マニュアル化した仕事をやって貰ったら良いと思うけど。」

「ここの仕事は如何するんや。」

そりゃあ、あなたが考える事や無いですか、そこ迄考えられん。

「この仕事は覚えるのに10年位かかる、娘がそっちに行ったらやる奴がおらん。」そこはさ、誰か雇うしか無いじゃない。

こんな社長は会社を潰すって典型例だ。

考えれば考えるほど、売れてよかったな~、としみじみ思う。

適正価格は会社が決めたら良いんだけどね、本当に。



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