【小説】恋の幻想
「そうだコンビニで食べ物買ってこようか?」さっき行った時に買って来てもらえば良かった、考えながら聞いてみる。
「ご迷惑ですから。」女の子は丁寧に断って来る、でもお腹が空いてるんじゃ無いかな。
「何か買ってきてよ、お腹空いてるんだから。」裕子が言ってくる、自分が買ってくれば良かったのに。
そう思いつつも、頷いてコンビニに向かう、家は食べ物調達が便利なところを探していたから、我が家はコンビニに近い。
よくよく考えれば、家主である自分は外で泊まって、違う二人が家に居るのは変だ。
でもあの女の子は事情を話しそうにない、裕子に聞いてもらうしかないだろう、自分が居ると何も話さないかも知れない。
コンビニに行くと、迷うことなく一番安い弁当を3つ抱えてレジに行く、3人分は結構な出費だ。
「温めますか?」日本人とはちょっと違った発音で聞かれる、夜に働いてくれるのは外国人なのかな。
「温めてください。」家で温めるのが面倒だから、ここで温めて貰おう、なんて考えながら家に戻る。
「ただいま、買ってきたよ。」3人分のお弁当机の上に出す、2人で何か話していた様だ。
「ご飯食べようか、お腹空いているでしょ。」裕子が自分が買ってきたみたいに誘う。
「うん、腹が減っては戦は出来ぬってね、取り敢えず満腹になれば、いい考えが浮かぶんだよ。」俺も続く。
「すみません、ありがとうございます。」さっきまで俯いていたいた顔が上を向いている。
「食べてから話そう、落ち着いてからね。」冷蔵庫にあったペットボトルを出して置く。
「お茶置いとくよ。」本当はペットボトルは好きでは無い、1人暮らしでいつもお茶飲むためにはやむを得ない。
「ペットボトルって嫌いじゃ無かったの?」見た途端顔をしかめ乍ら裕子が呟く。
「嫌いだけどそんな事言ってられないからさ、冷蔵庫に常備してるんだ。」答える。
裕子はキッチンの中をあちこち開けて、湯呑になりそうな物を3つ揃える、1本のペットボトルを3人で口を付けて飲む訳には行かない。
「お茶っぱ位用意しておいたら、私が居れば出してあげるんだから。」と主張。
「だってお前、婚約破棄したからさ、居ないのを想定して生活するだろ、普通は。」忘れた訳じゃ無い。
婚約破棄したら殆どは会わなくなってしまいそうだが、裕子はそうでは無い、いつの間にか自分の部屋に入っている。
「婚約破棄してるんですか、カップルだと思った。」女の子が目を丸くしている、その反応が正しいんだよね。