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【小説】恋の幻想

裕子さんの言葉に思わず声が大きくなっている、いつもとは違う自分の声に自分でも驚いてしまう。

「デートとかもしていないのに、結婚しようと思っていたんですか?」その時の私の顔は口をあんぐり開いていただろう。

「してないよー、何でしてると思ったかの方が不思議だわ、そんな感じじゃ無かったでしょ。」確かに元婚約者って言っても、それらしい動きは無かったから、不思議には思っていた。

「私は如何でも良かったって感じかな、良平は如何なのか知らないけど。」ニヤリとしながら話してくる。

「でも、婚約するって言ったら大変でしょう。」思いがけない言葉に何を答えていいか解らない。

さっきまで笑っていた顔が真剣みを帯びる、真剣な顔はここに来た時の夜に抱きしめて貰って以来だ。

「良平は早くに親を亡くしていて、私の親は無関心だから勝手に婚約って言っていたんだよ、それでもね、いいとは思ってたんだよ。」裕子さんは言いにくそうに言葉を切る。

厳しくはないが真剣な瞳が私の方に向いている、私も真剣に答えようと思っていた。

「考えてみたら、結婚しちゃっていいのかなって思ってさ。」私に向いていた顔が項垂れて居る、やっぱり後悔してるのかな。

「何でだったんですか、今も仲良くしているのを見ていると、何故だか解らない、私だったら好きなら結婚しちゃいます。」裕子さんには嫌な言葉かもしれないと思いながら言ってしまった。

困った時に出る言葉が出にくい表情で、裕子さんは話を続けてくれる、これは絶対に言って於くと云う気概が見える。

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