【掌編小説】 鏡の中のあの子
どうして誰かを失うと、自分自身まで見失ってしまうのだろう。無色の言葉たちが頭に浮かび、反芻される。硬い床の上で寝転がって、天井を見上げていた。寝る場所がない訳ではない。ベッドはいつも通り、すぐ隣で私のためのスペースを空けていた。寝苦しい夜、というのとは少し違う。寝たくもなければ起きていたくもない。温もり、柔らかさ、安心感・・・ベッドの上のそういうものたちが、疎ましく思う夜があるのだ。道路のど真ん中で、アスファルトの上で眠ってみたいと思うこともあるけれどそれは現実的に考えて危