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営業は人を好きになる仕事

大学卒業後、入社した保険会社での部署は法人保険の営業でした。
一、二ヶ月の研修を経て担当エリアの会社法人に飛込み営業し、先ずは社員の方々に顔を覚えてもらい、話をし、上の役職の方に繋いでもらって面談、保険の提案をしてきました。

当時の私は、敬語も使いこなせない、保険の知識も浅い(付け焼刃)、コネもない、無い無い尽くしでしたが、同期も皆似た者同士、毎夕、帰社後にそれぞれの失敗談を笑い合って勤めてきました。

そのうち、個々の工夫が見え出しました。それぞれの長所を活かし斬り込んでいきます。どう進めるか悩みながらも、先ず自分を知ってもらおうと新聞を作りました。日経新聞を読み、そこからつながる小ネタ、ウンチクを載せたり、四コマ漫画を描いたりして、兎に角、読んでもらって、自分を知ってもらって、社員の方が保険加入するならこの子からにしようと思ってもらえるよう必死でした。ウンチクも今から三十年程前のこと、ネット検索もなく、地道に図書館や本屋で調べるのみ。毎日の事だから調査時間も少なく内容は浅く、四コマ漫画もホントに下手っぴ。そのオチも、例えば彼は『目玉焼きではなく卵焼きが好きだった』。何ともお粗末、恥ずかしい漫画でした。

22歳の私が知らないことを、新聞ネタにしていたけれど、社会人の先輩なら当然知っていたであろう事を、知らぬが仏で、自分は新たに挑戦し頑張ってやってるぞ、と配り回っていました。

しかしながら、決してスマートではありませんでした。移動時間が読めず早く着きすぎたり、契約書類が不足して、慌てて取りに行ってリ。緊張しながら配り回っていたので、訪問先の企業の階段から足を踏み外して転げ落ちた事もあります。「蒲田行進曲」の階段落ちのシーンを彷彿とさせる落ち方です!
慣れないヒールを履き、パンフレット、アンケート用紙の他に、自作の新聞を鞄にパンパンに詰め込み、配るのです。声を掛けてくれた方々一人ひとりに〇〇さん、ありがとうございます!!あちらの方にも緊張しながら挨拶し、こちらにも緊張しながら挨拶し、次のアポイント、提案の話をしてと。一人でぐるぐる回っていたので、時にドアに顔をぶつけ、時にヒールが脱げて、遂には、二階の階段から一階のロビーまで転げ落ちるという有り様。
平田満は大怪我でしたが、私は痣だらけでしたが無事でした。でもそこは放送局、アナウンサーや記者に受付嬢がいるロビーに転げ落ちたときは、一人で笑って立ち上がりました。

無様な姿に同情してくれたのでしょう。翌日、惨劇を見ていた編成部長に呼ばれ話を聞いてもらえました。

あのときは、夜の11時まで次の日の書類作成をし、終われば自転車を立ち乗りしてアパートに帰って寝る、翌朝またパンコパンコの鞄を持って企業周りを繰り返していました。

仕事をすることに夢中でした。そして、少しずつ応えてくれる方が増えてきたことに、やり甲斐も感じていました。

1年目の秋、県の同期入社で一番になり、父に入社祝にと買ってもらった車代を返せました。同年冬の優秀賞では両親に旅行券とタラバ蟹を贈れました。

振り返れば、自分以外も皆営業成績を上げていました。自分が飛び抜けて優秀だった訳ではなく、自分を引き上げてくれる方が何人もいてくれたお陰でした。

2年目に、入社式に歓迎の意を述べる役を仰せつかりました。その時述べたことばが、今日のタイトル「営業は人を好きになる仕事」です。

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最初は自分を知ってもらおうと、自社の商品を知ってもらおうとしていましたが、個人保険も企業保険も、当たり前ですが加入するのは相手です。その相手が何に満足しているのか、不安は何か。家族にどうしたいのか、どういう会社にしたいのかを知らずに提案しても的外れでした。

それを知るには「相手を好きになること」。


好きになれば、望んでいることに応えたくなります。

目の前の方を好きになり、その人の人生の役に立ちたいとおもえば、自ずと聴取したいことや提案も出てきます。
保険の営業をするといえば、ノルマや厳しい風当たりと思われがちですが、人を好きになる仕事だと捉えてください。
訪問先には仏頂面をした方もいます。アンケートに答えない方もいます。でも、それは訪問した私たちを嫌いだからでなく、保険は今は不要だっておもっているからです。


これからする営業は、人を好きになる仕事だと、素直にそれに取り組む貴方がたを、私達は全面的にバックアップしていきます!

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若くて見えないことは一杯あって、齢を重ねても見えないことはあって。

怒られたことも叱られたこともあしますし、悔やむこともあるけれど、営業をすることで様々な方の人生を垣間見れたことは私の糧となりました。断られたことも多々ありますが、相手に対して礼を失する振る舞いはしてこなかったという自負も、今、糧となっています。


夜遅くまで働くこと、頑張りすぎることはお勧めしないけれども、仕事をするにおいて、「人を好きになって」仕事していくという姿勢は、自分にも、仕事で関わる人にも、良いのだとおもいます。



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