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ある女の子の物語

ある女の子がいた。
まだ6歳くらいだ。ずっと一人で歩いている。
近くに両親もいない。

「どこに行くの?」
「お家に帰りたい」
「お家はどこ?」
「あっち」

一緒に歩く、どこから来たことも分からない女の子
「お父さんに会いたい」
「お父さんのところへ行く」

この子のお家はどこなのか?
お父さんのところへ行くとはどういうことなのか?
分からないまま一緒に歩く。

時間はドンドン過ぎていく。
覚えているであろう道をアチコチしている。
ふと思い出したのか。走り出した。

その先にはお父さんでもない人がいた。
「おばちゃーん」とその子が言った。
そのおばちゃんは
「どこ行ってたの?探してたんだよ」
「あのね。お父さんに会いたくてお父さんのところへ行こうとしたの。でも分からなくなった。」
と無邪気に答えている。

この子にはお父さんもお母さんもいないのだろうか?
なぜ?お父さんを探していたのだろうか?
このおばちゃんは誰なのだろうか?

私の中で疑問が湧いていたら

「ありがとうございます。父親と母親が離婚して今は私の家で面倒見ているんですよ」とおばちゃんが一言。ちょっと安心してその場を離れた。

「寂しい思いをしているんだなー」と思いながら私も家路に急いだ。あの子は今、元気で過ごしているんだろうか?


実はこの話の6歳くらいの女の子は私。

一緒に行動したのは空想の私。それ以外は実際に会った話である。
父と母が離婚して私はおば宅へ引き取られた。父が親権を持ったが子育てをするには仕事柄難しかったからだ。

この時のことは鮮明に覚えている。家に帰ってふらりと父に会いたくなった。決しておば宅がイヤではなく、ただ父に会いたかった。父への家への道が分からなくて結局おば宅へ戻ったのだが、その時おばは泣きながら抱きしめてくれた。ココ(おば宅)が私の帰る場所なんだと心に刻んだ。

きっと安心したのだと思う。父がいないさみしさもあったがぬくもりがこの家にはあったように思う。

私が今、いつでも相談できる24時間相談受付をしているきっかけも、こうした”ぬくもり”を伝えたいからではないか?となんとなく思った一日でした。

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柚木幸子
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