海への憧れ
海を見た時にどうしようもなく胸が高鳴るのは、海のない土地に生まれ育ったからだろうか。
正直、海そのもので遊びたいという気持ちは、あまりない。あの、どこにでも入り込んでくる砂が苦手だ。全部洗い流してきたはずなのに、なぜかバッグの中や、服のポケットや、靴の中や、あらゆるところに潜んでいる砂。
近くまで行って海風や波の音を感じる、その辺りが私が海と直接接して幸せを感じる距離感だ。
しかし、例えば移動中に、ふと視界が開けて海が顔を覗かせた瞬間の私の気持ちは、まるで推しと目が合った!と思った(大抵思い込みだけれど・笑)瞬間によく似ている。そんな風に感じるのは、滅多に会えないからなのだろうか。それとも、側で暮らしていても、例えば毎朝窓を開けたら海が見える家に住んだとしても、そう感じるのだろうか。
地球の生命が海から生まれたことと、もしかしたら関係があるのかもしれない。郷愁?生まれた場所への憧れ?
故郷について感じることは、人によって違う。誰もが懐かしさや、帰りたいという想いを持っているわけではない。そこで嫌な思い出があるとかそういうことではなく、単に特別な想いを感じない人もいる。しかし私は多分、自分の過去の体験、過ごした場所、出会った人、そういったものに感情移入するタイプの人間だ。
そう考えると、過去に訪れたことのある海、何かゆかりのある海、に特別な想いを抱くならわかる。しかし、この感情は、特定の海ではなく海そのものに抱いているように感じる。だとすると、やはり海の存在そのもの、よく言われる『母なる海』というものに対する憧れだと考えられなくもない。真相はわからない、わかる日が来るのかもわからないけれど。
しばらく海を見ていない。近々、夫を誘って行ってみようか。ドライブして、海を眺めて。何を感じているのか探ってみようか。