全部あって全部ない色
仕事で色彩心理のお話しをよくするのだけれど、色の性質やその色が人の心に与える印象や影響の話をする時に
「白ってどんな色ですか?」
と聞かれることがある。
「白は全部あって全部ない色なんですよね。」
と答えると、皆さん、狐につままれたような顔をする。
白紙、真っ白でけがれのない、頭が真っ白になる、などは、何もないイメージだ。
そこには、これから始まる、という場合と、全部なくなった、という場合と両方のケースがある。
光はプリズムを通すと虹を作る。
これは分光といって、それぞれの色の波長が違う⇒屈折率が違うために、プリズムを通った後の光がたくさんの色に分かれるのだ。
逆に言うと、全部の色を合わせたものが白(透明)の光。
全部あるのだ。
白星と言えば勝ちだし、白旗を揚げると言えば降伏=負け。
相反するイメージを併せ持つとは、何とも不思議な色だ。
私にとって白は、フラットな色でもある。
何物にも染まらない、自分の色にすら染まらない、誰にも害をなさない。
清廉潔白というイメージに近いが、もっと現実的でシンプルな感覚。
素材そのまま、という方が近いかもしれない。
時に高い理想を追い求めて苦しくなってしまいそうな感じもするけれど、絵空事とも言えそうな神様の仕事のような理想ではなく、白いシャツのように基本の色、ベーシック、という意味で大切にしたい色でもある。
そして先入観を持たない、個人的な意見に振り回されない、まっさらな状態で、『私がどう感じるか』を大切にしたい、という意味でも、鍵となる色かもしれない。
全部あって全部ない、何となく伝わるだろうか。
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