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伊那を旅して 10


紅葉は、標高によって行きつ戻りつする。
山の上から色づいてくる木々たち。

少し先の季節の中にいるんだな

山の色から季節の移り変わりを感じる。

野生の森に紅は少ない。
もみじは人の植えた木なんだなとしみじみ思う。

この山の黄色は何の木なんだろう。

***

R153を走っていると、視界が急に開けた気がした。道の駅の看板がある。着いたみたいだ。

道の駅 信州平谷

事前に聞いて名前を知っていた道の駅。
昨日行こうとして断念したところ。

来られてよかった

看板を見て嬉しくなる。

バイクの駐輪場があり、ホッとする。
道の駅には、まだあまりバイク用のがないから。

ちょうどお昼だ 食事にしよう

お店の中に入ろうとしたら、お店の人が軒先でちょうど品物を並べていた。その手元にふと目をやり、思わずじっと見てしまう。

渋柿だ!!

花の里いいじまにも、今朝実は渋柿があった。が、手持ちの現金が1,000円しか無くなっていて、買うのを諦めていたのだ。

安い!!これなら買える!!!

値段を見て、また心が揺らぐ。
あとの悩みは、積めるかどうか。

今回、荷物は最小限に減らしている。特に帰り道、空いたバッグで帰れるように中身は少なくしてある。

あれなら入るんじゃないかな

目の前の渋柿とにらめっこしながら、しばし悩む。

ええい。買ってしまえ。

柿を手に取って、店内に入った。

***

店の中は物色せず、レジへ直行。お金を払ったらすぐ隣の食堂に入る。

何にしようかな

面白い名前の食べ物があり、気に入ったのでそれにする。最後の1,000円を出した。ここから先は、小銭だけの旅だ。

窓際のカウンターに座ろうとしたら、日差しがまぶしい。暑いなと思い、ひとつ中のテーブルにした。

低めの椅子に腰掛けて、食事を待つ。周りはお昼時で仕事中と思われる男性が多い。

そういえば、今日は月曜だったか

さっき買った渋柿を思い出す。

念願の渋柿

これで今年も干し柿が作れる

嬉しくなっていたら、番号を呼ばれた。

定食の名前を忘れてしまった

うどんのスープが選べるので、関西風のだしに。ご飯のトッピングも選べて、おかかにした。

昼時に、屋根の下で食事にありつけることに感謝する。道の駅は偉大だ。

***

食べ終わってまた、次のルートを確認する。次の目的地も道の駅だ。ここも名前を教えてもらっていたところ。道は簡単。すぐ先のR418をずっと行けばいい。

ゆっくり休憩できた これなら走れそう

お腹が空いていたせいか、周りもよく見ずに店内に入っていた。外に出て、改めて周りを眺める。

空が青い

3日目も晴れたなぁ

雨マークがついていたのに、強行してきた今回の旅。相棒は雨と仲良しらしく、どこに行っても雨に降られるのに、今回はまだ降られていない。

バッグの中には、雨具一式。バッグもウエストポーチも完全防水。降られる想定で来ているけれど、今回は濡れないまま帰れるのかな。

四国のあの道の駅みたいだな

なぜか、似ている道の駅を思い出し、懐かしく思いながら、バッグに渋柿をしまって出発した。

***

道の駅 信州新野千石平 蔵

少し走ったら、すぐに次の目的地に着いた。

バイクを端に停める。

立派な屋根
いい天気

昨日の気温との落差に参ってしまう。着込んでいるところに日差しがあり、ほてってしまっている。

まだこれから山の中だから

着ているものを減らすか悩む。

少し休もうと建物の中に入ったら、座るところがなく、一周して出てきてしまった。

どうしよう

眠くはないけれど、かすみがかかったように頭がぼんやりしている。日陰で座るところが欲しい。

どこにもないので仕方なくバイクに戻ったら、後ろから声をかけられた。珍しいなと思いながら、振り向いて挨拶すると、バイクに乗っている人だった。

これから走る方向が同じこと、今日朝いたところがとても近かったことなどを知り、疲れていた気持ちが和らぐ。

ひとしきり話をした後、最後によかったらと名刺をくれた。

『駒ヶ根でユースホステルをやってるんですよ。光前寺の近くなんです』

「えっ?早太郎のところですか?」

『そうですよ。よかったら』

そう言って、その人は先に出発していった。

光前寺はよく知っていた。noteに出てきて、気になって行ったことがあるから。

駒ヶ根からこんな離れた道の駅で、早太郎のことを思い出すとは思わなかった。思わず笑みがこぼれる。

疲れが飛んだ。

がんばろう

まだまだ続くこの旅を走り抜こうと思った。



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