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伊那を旅して 8
長野県飯島町。
ふるさとのようなところ。
もう20回以上来ているはず。
何が気に入っているのか。
視界の両側にアルプスがあるところ
果物がおいしいところ
夜、天の川が見えるところ
朝、空気がキリッと澄むところ
少し経つと「ああ、行きたいな」と思うところ
***
花の里いいじまを離れ、宿に戻ってきた。スタッフさんが出てきて『おかえり』と言ってくれる。
明日、帰るのか
少しさみしくなる。スタッフさんは、今日も宴会で忙しそうだ。
自分の部屋に戻って、すぐにお風呂へ行く。
誰もいない。体を洗い、広い浴槽で手足を思いっきり伸ばす。肩をほぐす。腕も足も。
疲れているのか。今日は星を見に外へ出る気がしない。朝も、夜明けを見に行かずに、部屋にいた。部屋でnoteを書いていた。
昨日の旅で、心にかかっていたもやは綺麗に消えてしまった。あんなに悩んでいたことも些細なことに思えた。あんなに嫌だったことも今ならできる気がした。
旅をするのは、心を整理するためなんだろうか。
お天気に感謝して景色に感動し、心が動き柔らかくなっていく。そうやってほぐれていくうちに、こだわっていたことがどうでもよくなってくる。
そうして、また現実に立ち向かう。改めて対峙してみると、視野が狭くなっていたことに気づく。
自分の気持ちにゆっくり向き合い、嫌だった理由を見つける。そこにどんな訳があってなぜ拒んでいたのかを知る。
次に自分の非を探す。人から教えてもらったこと、言葉にしてもらったことと向き合う。その行為に素直に感謝して、自分のなすべきことをする。
そのためには、まず自分の気持ちを知らないと。
そんな時、バイクはとても便利だ。
たった一人、風の音とマフラーの排気音しか聞こえない、人の気配のない中で1日過ごせる。車ではこうはいかない。ラジオや音楽が聴けるから。
だからひとり、バイクで旅をしたいんだろうな。
定期的に頭の中を断捨離してるみたいな?笑
整えるために走っているような。
無事に気になることを済ませて、帰り支度を始めた。
***
どこから帰ろうか
簡単に帰るなら、高速に乗ればすぐに帰れてしまう。それは、あまりにももったいない。なら、下道でと思うと、行きと同じ道を走ることになり、それもまたもったいない。
ライダーの性は、一周したくなること。同じ道をなぞるのは許されないというか、つまらなくて嫌なのだ。
持ってきた地図を広げてじっと見る。
高遠は楽しかったから、もう一度通ってもいい気がする。むしろ、通りたい。でも、そこまでが同じなのはつまらないから…
とりあえず、アップルパイ食べに行くか
昨日さよならしたはずの道の駅を思い出す。昨日間に合わなかったアップルパイのお店。朝イチで行って、食べてからもう一度考えたらどうかな。
そう決まると、ようやく出発する気になり、荷物をまとめて宿の部屋を出た。
今日もまだ青空が見えるんだ
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今日の天気は曇り。雨マークはない。
結局、3日目も降らなそうだ。こんなこと初めてかも。青い空に感謝する。
いつも雨に遭うのは相棒のせいだと思っている。もう慣れているので、雨装備は万全だけど。でも、できれば晴れている方がいい。
大好きなスタッフさんと別れを告げる。見送ってもらうと、背中からさみしくなった。
少し走ると、道が開ける。
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向きを変えると、だいぶ空の様子が違う。帰り道を選べということか。
また花の里いいじまへ。お店はもう開いていて、すぐに買えた。店の前のベンチで食べる。
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出来立てで熱々のアップルパイを頬張ると、サクサクほろりと皮が崩れる。美味しい。中に入れてくれるカスタードがりんごの酸味を引き出してくれて、またいい。
食べながら、目の前に視線を向ける。
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食べ終わって道の駅に入ってみた。欲しかった渋柿がある。買って家に送りたい。でも、確か現金会計だったはず。使い過ぎてあと1,000円しか残っていない。
諦めて店を出た。
最後、トイレに行ってから出よう
綺麗に改装されたトイレに入る。
手を洗い、外に出た途端、ふと思った。
南に下ろう
トイレに入る前は、北に上るつもりだった。高遠までの道は少し変えたくて、中川村を通りながら小渋湖の脇を抜け、県道22号から大鹿村に入り、R152で北上しようと思っていた。それなのに。
トイレから出たら、別人になったかのように頭の中が南下一択になっていた。
何が起こったんだろう
トイレで思ったのは「今が盛り」だということ。
南下は理想的な帰り道だった。昨日行けなかった道の駅にも行けるし、お勧めの道も走れる。
ネックは、距離が延びること。高速が長いこと。
その体力が自分にあるのか。
連日走って3日目 無理はできない
無理はしない。
そう思って距離の短い方を選んでいたけれど。
今より無理できる時なんて来るのかな
また乗り始めた4年前より、確実に体力は落ちてきている。来年来たって、今よりひとつ年取ってるんだよ。今行けなかったら、もう行けないんじゃない?
目の前の山は雲がかかっている。あの中を走ると、雲の中かもしれない。
南は青空で、晴れていた。
全身に陽を浴びて走る心地よさを思い出す。両側にアルプスを見ながら開けた平野を走る気持ちよさ。空が広く、吸い込まれそうな開放感。
想像したら走りたくなった。
うん 南へ下ろう
旅なんて、そんなものなんだ。
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