毒吐きの彼女
彼女は毒を吐く。
彼女とカフェに来ていた時のこと。
彼女はマグカップの中を見詰めながら、グルグルとティースプーンで紅茶を混ぜていた。
かき混ぜ始めてから、軽く10分は経っている。悩み事や考え事をしている時の彼女の癖だ。
「どうしたの」と問うと、彼女は僕を一瞥し、面白い話ではないだろうけど__と遠慮がちに話し出した。
「知人が『自分面倒な奴なんだよね。あんたも私と話してて面倒でしょ?』と言ってきたの。一々確認するんだから、気にしてるんだと思ったのよ。それなら気を付ければ良い話よね。もし自分の個性と開き直ってるなら、あんな発言せずに黙ってれば良いのに!と思って」
まあ、あの人が本当はどう思ってるかなんて、知らないけど、と呟くとスッと目を細めた。
これも彼女の癖で、目を細めるのは、彼女が冷めた時にする癖。どうやら余程相手が面倒だったらしい。
後日、彼女はすっきりとした表情で「またおんなじこと言ってきて、耳にタコだったから、思ったこと全部かましてやった」と笑顔で報告してきた。
相手の反応を聞いた所、ジブリのカオナシみたいだったらしい。
彼女の台詞は、容赦がなく、確かにと思わせられるものがあることを僕は知っている。人によっては為になる台詞に思えたり、ある者にとっては、毒のように痛く強烈なものに思えるだろう。
今回の場合は、反応からするに、相手にとっては、彼女の台詞は毒のように強烈でキツいものだったに違いない。