私は歯医者が嫌いだ

私は歯医者が嫌いだ。
いつからかなんて言うと覚えていないけれど、多分一番古い記憶を辿ると、保育園児の時点で、嫌いだったと思う。
とにかく、あの耳障りな高音で硬音の金属音?あの音が、自分を襲った痛みをまざまざと思い出させてくれて、待合室で落ち着いていられないくらいだった。これに関して言えば、いい大人になった今でも変わることはない。そのため、麻酔の注射よりも削られる方が嫌いだ。

幼い頃通っていた歯科医院は小児歯科医院で、待合室にあったテレビは何故か、治療中の様子が映るようになっていた。今思い出してもなんでだろう、と思う。ただ、泣き叫んだり暴れたりする患児の様子が映し出されることはなかったため、そういった子が座ることのない席だったのだろう。実際、見せられている方の心理としては、治療と言う名の拷問へのカウントダウンが始まった、と言うような気分にはさせられていた。治療の椅子が空く、イコール次は自分だ、と言う流れのためだ。
更に、定期検診のために行くこともあったのだろう。歯科衛生士のお姉さんに赤い液体でうがいをさせられ、ピンクに染まった自分の歯を鏡に映しながら、歯磨きをさせられる。その後、なかなか白くならない自分の歯に絶望をする、と言うルーティンを幾度繰り返したか…と言うことも覚えているものの、いつの間にか小児歯科は卒業することとなり、卒業の際、新しい歯科医院には行きたくないと思ったあたり、居心地の良い歯医者ではあったと、大人になった今では、良い思い出だ。

歯医者が苦手になったエピソードには、事欠かない。
基本的に歯医者は、歯の痛みか被せたもの(クラウン)が外れた時にしか、世話になったことがなかったのだけれど、ある時、齲歯がないか確認してもらおうと思い立ち、数年ぶりに自分にとってはかかりつけだと思っていた歯科医院を受診した際、めちゃくちゃ怒られたのだ。こんな状態で何を考えている、治療に長期間を要する等、治療前にとにかくめちゃくちゃに怒られてしまい、怒られれば患者の自分は謝る訳で、未だになんであんなに怒られたのか良く判っていないダメな患者である。ただ、言い訳をさせていただくとすれば、通院しなかった期間は、勤務先の近くの口腔外科にお世話になっており、自分の中では歯科医院には全く通っていなかったわけではないという認識だった。ただし、齲歯や歯石チェックに関しては人間ドックのみで、怒った歯科医師の言い分は間違ってはいない。そんな経験をしたというのにも拘らず、またそのかかりつけ歯科医院からは、また調子が悪くなったら来院する旨言われたこともあって、暫く歯科医院に行く機会を逸してしまっていた。
それから数年後、上の両奥歯のさらに奥の歯肉からの鈍い痛みに嫌な予感を覚え、歯科受診が頭の片隅を過ぎる。かかりつけの歯医者は、前回のお叱りがトラウマ級だったため、新しい歯科医院を捜すことになった。ありがたいことに、田舎においてもネット予約の恩恵を受けることが出来、更には自宅から徒歩圏内の歯科医院を見つけることができた。

で、現在のお話。
歯に関しては小児歯科で顎が小さく歯が大きいということで、歯並びを考えて永久歯を抜かれたり、高校時代に自転車事故で上下の前歯を脱臼骨折し、神経を抜くことになったり。その影響で下の前歯の歯根部に嚢胞ができ、ストレスや疲れが溜まることで化膿胞となり、切開排膿で口腔外科のお世話になったり、下の親不知が真横に生えていたため、切開しての抜歯となったり、更に、上の親不知も当然のことながら真横になっており、同様に切開抜歯とそこそこ外科的処置の恩恵にあやかっている。
最近も、化膿胞が再発し、結局歯肉を剝がして骨を削って膿胞を取り出すという、そこそこ大きな処置をしたところだ。
結果まともな歯が少ない、と言うこともあり歯のケアには、色々気を遣わざるを得ない状況となっている。
CM等の影響もあるのだろう、歯石や歯周病と言った言葉が周知されている中、このままいくと自分も総入れ歯覚悟では?インプラント…金がない、と言うようなことを真剣に考えているほどだ。

新たに見つけた徒歩圏内の歯科医院は、治療終了時に定期検診を勧めてくれたため、その言葉に甘えさせていただくことになった。
定期検診がある。イコール、齲歯が見つかると恥ずかしい。と言う謎な方程式が脳内にあり、結果、いい加減歯のケアはしっかりしなければ、と始めたのがデンタルフロスだった。本当は糸ようじやホルダータイプのものでケアをしたかったのだけれど、歯間が狭くフロス部分が入ったは良いけれど、抜くことが出来ず鋏を使うことになったこともあり、結局ロールタイプに落ち着いた。
毎朝夕食後、歯磨き後にフロスを入れて再度歯磨き、昼は歯磨きのみ。
本当はフロス後に歯磨きが良いのだということは判ってはいるのだが、歯間に食物残渣が引っかかっている状態であることが殆どのため、その汚い口内に指を突っ込みたくないための苦肉の策だ。
当然のことながら、歯磨き後であろうとフロスには見事に食物残渣を釣り上げてくれる。それが結構楽しくなっており、ここ数年は旅行でもしっかり持っていくくらいだ。
3カ月おきの定期検診時に、歯石がないということはないのだけれど、齲歯と歯肉チェックも今のところ問題なくクリアできている。
生きることは食べること、とは正にその通りと言わざるを得なく、ヒトは自分の口からものを食べられなくなると、途端にすべてが衰えていく。元気な最期を迎えるために、また、迎えるまでに美味しいものを美味しく食べるために、健康な歯を維持していきたいものである。

#いい歯のために

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