入院手術 // キセキ6
この記事は、こちらのマガジンの記事です。
(前回までのあらすじ)
ステージ0~1の乳がんの告知を受けた私は、病院の先生との相談の結果、乳房部分切除(標準治療)を受けることに決めました。
2018年10月中旬。いよいよ入院手術日がやってきました。入院は3泊4日で、手術日は2日目です。
入院1日目(手術準備)
私の入る病室は4人部屋でした。病棟はきれいに改装されており、とても快適そうです。
病床に到着後一息ついたら、お風呂、手術前の説明などがあり、あっという間に時間が過ぎていきました。
また、手術でセンチネルリンパ節生検を受けることにしていたため、センチネルリンパ節マーキングも1日目に行われました。
夜、少し時間があったので、看護師さんにお願いし、乳がんケア用下着(ブラジャー)のサンプルを見せてもらいました。私も少し用意していましたが、改めていろいろな実物のサンプルを手に取り、今後の参考にしたいと思うことができました。
こうして、消灯とともに眠りにつきました。
入院2日目(手術当日)
予定より早く始まった手術
入院2日目は、いよいよ手術。私の手術は、午後2時~4時くらいで行われるとのこと。
手術前、私は夫と一緒に病棟の談話室で過ごしていました。まだ、1時間ほど余裕があります。すると、看護師さんがガラっとドアを開けて入ってきました。
「さちささん、始めますよ!」
「「早っ!!」」
思わず、夫と私は同時に言葉を発しました。前の人達の手術が、早めに終わったようです。私は、大急ぎで歯を磨き、手術の準備をしました。このときは、今から自分が手術台に乗るということに対して、まだ現実感が湧いていませんでした。
いざ、手術室へ
しかし、エレベーターで手術室へ向かうときです。突然、強い不安感が私に襲い掛かってきました。思わず表情がくもり、若い看護師さんも心配そう。さらに手術室のあるエリアは、とても物々しい雰囲気がありました。
手術室に入り、指示通りにベッドに横になります。これから何が起きるのか……。怖い、本当に怖い。声にこそ出しませんでしたが、体は岩みたいにこわばっていたと思います。
しかし。手術室のスタッフさんは、非常に緊張感をもってテキパキと動いています。
「この人たちは、私のためにこれだけ真剣に取り組んでくれている……」
その姿があまりに美しく、私はここで恐怖を忘れて見入ってしまいました。
準備は非常に迅速に終わり、いよいよ全身麻酔です。麻酔薬が入り、物が二重に見える……?と、思った次の瞬間には眠ってしまいました。
麻酔から目覚めて
私の夫と両親は、待合室で手術の始めから終わりまで待っていてくれました。他の患者さんは予定より早めに終わりましたが、私は2時間の持ち時間をフルに使ったそうです。そのため、待機していた家族は全員不安だったと語ります。
しかし、手術が長かった理由については、あとで深く、深く噛みしめることになるのです。
全身麻酔から覚めた私は、その場ですぐに漫画を読み始めるほど元気でした。看護師さんとは手術の感想を平然と話していましたし、気分が悪くなることもありませんでした。
術後の痛みはありましたが、それよりも、悪いものが出ていったスッキリとした爽快感が勝りました。
私の両親は、私のあまりの回復の速さに驚いていました。両親が帰宅した後も、夫はしばらく残ってくれました。本当にありがたいことです。
入院3日目(退院前日)
手術後の回復は、非常に順調。日中は、妹、母親、夫がお見舞いに来てくれ、穏やかに過ごしていました。
深夜の病室で
その夜、ふと小林麻央さんのブログを思い出し、消灯後の深夜まで読んでいました。最後まで生きるために必死なその姿が、ずっと脳裏に焼き付いて離れなかったのです。心よりご冥福をお祈りします。
私は、枕元で声を出さずに涙を流していました。その理由は、生命のたくましさ、はかなさ、やりきれない気持ち、そして同じ乳がん患者として自分の姿を重ねたことなど、いろいろな感情が複雑に絡み合っていました。
それは悲しい、切ないだけでなく、心が洗われる涙でもありました。
……その間、私を静かに見守る誰かの気配を感じていました。それは、看護師さんでも、同室の患者さんでもありません。隣のベッドは空きですし、私に霊感はないです。しかし、その感覚を今でも忘れることができません。
それは、とても優しく包み込むような、温もりに満ちたオーラでした。その主は、今でも私を守ってくれているような気がしてならないのです。
今日の音楽
The Bangles - Eternal Flame
この温もりは決して忘れず、これからも大事にしていきたいと思います。