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がんに罹る前 // キセキ2

この記事は、こちらのマガジンの記事です。

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がんに罹る前の私の人生は、とてもわびしいものでした。

長生きはしたくない

私の人生に、輝かしい「青春時代」はありませんでした。孤独な学生時代、就職氷河期、辛い新社会人生活……。希望に輝いているはずの若い時期は、非常に失望感に満ちたものでした。

高校生のある日、道ですれ違った知らない人に「悪霊がついていますよ」と言われたことがあります。まったく相手にしませんでしたが、そう思わせるほど全身から悲壮感が漂っていたのは、間違いないでしょう。

そのまま歳を重ねても、やりたいことがわからず、苦しい日々を過ごしていました。平日は家と職場の往復。休日は疲れ果て夕方まで寝て、起きてもやることはなし。楽しいことは、ほとんどありませんでした。


食べることだけが楽しみ

ただひとつ、好きなことは「食べること」でした。幸か不幸か、下戸なのでお酒は一切飲めません。しかし、その分好きなだけ食べていました。

例えば、夜勤明けにラーメンを食べに行き、具材を増して一心不乱にむさぼることもありました。自炊もしましたが、元調理師の腕が災いして(?)食欲煽る料理を大量に作っては、がっついていました。

しかしいくら食べても心が満たされることは決してなく、体だけがみるみる大きくなっていきました。いつしか、店舗で売っている洋服はXLサイズですら入らなくなる始末。満員電車で、体形を理由に口論になったことも何度かあります。

毎日不愉快なことしかなく、負の連鎖におちいり、ますます不貞腐れていました。


右乳房の異変を1年以上放置

「なんか、右側の乳頭が痒いなぁ…」

いつからかわかりませんが、右側の乳頭が若干腫れあがっていました。いかにも痒そうな見た目です。しかし、ただの肌荒れだと思い、特に気にしていませんでした。

2017年のある日、職場で仕事していたときのことです。右乳房の乳頭に、これまでになく不快な痒みを感じました。脳にまで響くような、尖った感覚です。たまらず、トイレの個室へ駆け込みました。確認すると、乳頭に黄色がかった液体が付着していました。こんな経験は初めてです。

「何これ?!まさか乳がん??」

驚いて乳房を触ってみると、小さなしこりのようなものに触れました。しかし、「まぁ、気のせいだろう」とその場で片づけてしまいます。乳頭の分泌物についてネットで調べてみると「良性の場合もある」とのことです。私はその場で自己解決してしまいました。

このことを夫や母親に話すと「すぐに乳腺外科へ行きなさい!」と言われました。私は「うーん、わかってはいるんだけど…」と何かしら理由をつけて、病院にはなかなか行こうとしませんでした。そのまま、ズルズルと時は過ぎ、気づいたら1年過ぎていました。


ついに検査を受ける

2018年になり、会社の健康診断の時期がやってきました。このときの年齢は38歳でした。まだ人間ドックの対象年齢ではありませんでしたが、オプションで乳がん検診も受けることもできました。その頃には、これまで黄色だった分泌物に若干の血液が混じるようになっていました。

この段階で「絶対に検査をうけること!!」と、夫から強く言われたので、ついに重い腰を上げ、乳がん検診を申し込むことにします。

検査の種類は、超音波検査(エコー)を選択しました。調べてみると、40代以下は乳腺が発達しており、マンモグラフィには写らないことがあるようです(もちろん、ケースバイケースだと思います)。検査時の痛みは、特にありませんでした。


検査の結果、精密検査に

しばらくして、健康診断の結果を受け取りました。大きな封筒を開け、検診結果を取り出すと、何やら入った小さな封筒がポテっ!と落ちてきました。そこに書いてあった文言は「紹介状」。乳房の精密検査に関するものです。

「うわ!!こんなものが入っていたよ!」

ちょうど、そばで夕食を作っていた夫に報告しました。

「だから言ったじゃん!早く精密検査を!!」

流石の私も焦り、翌日には精密検査の予約を入れました。


精密検査を受けてきた

この段階ではさすがにまずいと思っていたので、精密検査は地元の病院で最速で受けました。内容は、マンモグラフィやエコー検査、病理検査(細胞診・針生検など)です。

細胞診は、細い針を刺して組織を少し採取するもの。針生検は、もう少し太い針を刺し、しこりの組織を一部切り取るものです。最初は怖かったですが、記憶に残るほどの痛みではありませんでした。

結果の確定まで、一週間ほど時間がありました。その間、特に気にすることはなく、普通に過ごしていました。

……今考えると、つまらない人生を早く終わらせることを、心のどこかで望んでいたのだと思います。


※この記事の内容は、2018年時点の個人の経験や感想に基づくもので、特定の組織や団体などの意見を代表するものではありません。また、挿絵の画像はすべてイメージであり、実在する組織や人物とは関係ありません。
※この記事を治療方針などの参考にされる場合は、必要に応じて専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願い致します。


今日の音楽

Holly Cole - Calling You
荒野の中をひとり彷徨い、来るはずのない助けをずっと待っているような気持ちでずっと過ごしてきました。


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