感謝の気持ちを込めて // キセキ10
この記事は、こちらのマガジンの記事です。
(前回までのあらすじ)
無事に乳がんの手術と放射線治療を終え、さらにホルモン療法での食欲不振をきっかけに、ダイエットにも成功しました。
病院に対する思い
私が駒込病院に出会ってから、自分のなかで素晴らしい出来事が立て続けに起こっていました。
乳がんの手術では、主治医の長月先生(仮名)が丁寧に私の気持ちに寄り添い、「自然な形を残して欲しい」という希望を叶えてくれました。これは本当に嬉しいことでした。
また放射線治療のときには、院内に職員さんの小さな心遣いがあふれていたため、快適に通い続けることができました。そこで得た気づきは、自分の仕事でも応用させていただきました。
さらにホルモン療法では、副作用をきっかけに-25kgのダイエットに成功しました。これは、思い入れのある病院で受けた治療だからこそ、ポジティブに物事を捉え、良い方向へ持っていくことができたのかもしれません。
こうして、私はこれらのキセキを与えてくれた病院に、もっと関わりたいという気持ちが芽生え始めていました。
治療はひと段落……
ここまで進むと、私の治療はひと段落です。病院に行く回数も経過観察とリュープロレリン注射のため、3ヵ月に1度となりました。本来なら、めでたしめでたし、といったところです。ところが……
……なんだか寂しい。これだけのキセキが起きた場所から、どうしても離れることができずに悩んでいました。できれば、何かもっと関係を深めたいけど、私には医療の経験はありません。ならば、せめて感謝の気持ちだけでも伝える方法はないものでしょうか?
気づけば病院のボランティア募集のページを、何度も見ていました。しかし、ひどく人見知りな私にできるわけがない、病院に迷惑がかかるからやらないほうがいい……と気持ちに蓋をしていました。
しかし、私の本音はこうでした。
「お世話になったみなさまの仲間に入りたい!!」
その気持ちは、みるみる私の中でふくらんでいき、ついには重い蓋を押し開けてしまいました。
人生の残り時間が有限であることは、つい最近確認したはずです。これまで私は人見知りのせいで、ありとあらゆるチャンスを逃してきました。もう、そんな人生はごめんです。
心を決め、次の通院の際にボランティアさんへ声をかけました。ボランティアさんは、すぐに担当の職員さんへ取り次いでくれました。そして、後日面接となりました。
ボランティアの面接
日は変わり、いよいよボランティアの面接日となりました。ところが、いざ面接に挑むとなると、やはり怖気づいてしまいました。
(あぁ……、私はいったい何やってるんだろう。こんな人が来たって迷惑だろうなぁ……)
不安と自信のなさと緊張が入り混じり、最初はガチガチに固まっていました。しかし、面接室に通され担当の方とお話をするうちに、次第に緊張も解け、非常に和やかな雰囲気になりました。
私は、ボランティアを志望した動機を、すべて素直にお伝えしました。それは、治療でお世話になったからその気持ちを少しでもお返ししたいこと、病院が大好きであることなどです。すると、
「自分がお世話になったから、感謝の気持ちを返そうと思うこと。それは、とても素晴らしいことだと思うの!」
……なんと嬉しい言葉なのでしょう。私のことをこれほどまで温かく迎えていただいたことは、今までありませんでした。私は、天まで昇るほど嬉しい気持ちでした。
「それでは、どうぞよろしくお願いします!」
最後に全員で挨拶し、面接は終了しました。こうして、ついに私は駒込病院のボランティアスタッフとなったのです。
新しい世界への扉が開いた瞬間です。これまで固く閉ざされていた私の心に優しい光が差し込み、暖かい風が吹き込んできました。こうして、私はさらなるキセキへといざなわれていくのでした。
今日の音楽
新しい一歩を記念して、今回は2曲ご紹介します!
①YOASOBI - もう少しだけ
ほんの少しだけ踏み出した一歩が、私をさらなるキセキへといざなってくれました。
②矢野顕子 - New Song
この曲の「ここに生きるよろこび わたしたちの中 ふくらんでゆく」という歌詞の意味を実感した出来事でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?