①反比例
別れがあるから、出会いがある―――
なんて誰が言い出したんだろう。
今の私にその言葉は響かず、降り出した雨が涙と比例して
強まっている。
「君は何も悪くないよ。すべて僕のせいだ」
ついさっき言われた言葉を思い出す。
言われた時にはショックと動揺で取り乱していたが、
浮気したのは向こうなのだから私は悪くない。
わかってはいても、浮気によって私という存在が否定された気がして悔しかった。
ああ、そうか。これは悔し涙なのか。
涙の意味を自己解決していると、どこかから助けを求めるような声が聞こえた気がした。
声の主を探していると、いた。側溝で震えながら、それでも必死に鳴いていた。
こんなドラマのようなことがあるのか。
それはこの夜に飲み込まれそうなくらい黒かった。
「きみ、はぐれちゃったの?」
しゃがみこんで見てみると、きれいな青い目をしていた。
思わず抱きしめていた。
私にも母性があったのか。
雨は強くなっていたが、涙は引いていた。
あれ、私のアパートって猫OKだったっけ。