幸せって何だろう(自分にとっての)という話をした -What is the happiness for me?
バンコクのホステルでとある女の子に出会った。
彼女はドイツ人で、少し前に教員になるための大学院を修了したらしい。しばらく各地でボランティアをしながら世界を旅して歩くのだそうだ。ドイツ人らしく自分の意見をはっきり言えて、何にも怖気付いていないように見える彼女は、私から見たらすごくカッコよかった。
彼女とは色んな話をした。
ボランティアで中国の山奥に行った時、初めて見る私(外国人)に子供たちが興味津々だった話。初めて日本に旅行した時の話。ドイツの教育制度は厳格すぎるという話。職業に貴賎は無いと思う話。色々話した気がする。
まあ実際のところ、"話をした" なんてレベルでは無かったかもしれない。
私の英語はひどいもんで、よく
「I can't exist without google translator!」(私はGoogle翻訳無しでは存在できない!)
なんて言っていた。
でもそんな中で、時には身振り手振りを駆使して、もちろんGoogle先生に頼りながら、何とか言いたい事を伝えたり伝えられなかったりしていた。
そして私は謝りすぎだとよく言われていた。
ドイツ人はそんなに"ごめん"も"ありがとう"も言わないらしい。それを聞きながら、はたして私から出る「ありがとう」と「ごめん」は、何パーセントくらいの「ありがとう」と「ごめん」なんだろうな なんて思ったりした。
それなりに仲良くなった頃、私はバンコクを後にすることにした。カンボジアに行くことにしたのだ。元々タイだけを旅する予定でいたのだけど、急遽予定を変えることにしたのだ。当たり前のように国境を越えていく旅の人を見ていたら、私も国を越えてみたくなった。ただそれだけのことだったけど、私にとっては冒険だった。
カンボジアへ行く前日の夜。
その日私はたまたま会った日本人に変なことを言われ、何となく自分の気持ちを消化できずにいた。別にショックを受けるほどのことじゃなかったのかもしれないけれど。そんなこともあって彼女に
「旅をしていると、時々悲しいことが起きることってない?」
なんて聞いてみたりした。
「あるよ」
そして続いた言葉は思いがけないものだった。
前日の夜、故郷にいる彼氏に「もう別れたい」と言われたらしいのだ。
初恋の相手で、もう10年以上にもなる長い付き合いらしい。
しばらく旅をすると言った彼女を、寂しいながらも送り出してくれた彼。
でも根本的に価値観のまるで違うお互いが、これからも一緒にいるのは辛いと思ったんだと。
世界を飛び回りたい彼女と、保守的な彼。
いずれは子どもが欲しい彼女と、そうじゃない彼。
彼を愛しているし、彼のいない生活は考えられない。でももう、私にとっての幸せと、彼にとっての「幸せ」は違うのかもしれない と。
そんな時私はどうしているかというと、何も言えなくなってしまうのだ。
「辛かったね」とか「その気持ち分かるよ」なんて言えない。言った方がその場的にはいいのかもしれないけれど。なんだかおこがましいような、浅はかなような気がしてしまう。
ただせめて、できるだけ近い気持ちでいようと、彼女の心に潜り込もうと努める。
思えば私も、自分にとっての幸せを見つけたくて旅をしている 気がする。
旅がしたい理由は一言では表せないけれど、多分自分がより楽に、心地よく生きていくヒントを探したいからなんだろう。
理想郷があるなんて思わない。あるとすれば創る以外に無い。(と思う)
でも幸いな事にこの世界は多様らしいから、自分に会った居場所とか生き方とか、考え方を見つけることもできるんじゃないかな なんて思う。というより、そう願っている。
What is the happiness for me.
That's the most important thing.
Maybe I will keep thinking till my end...
今見るとこっ恥ずかしくて笑いたくなるような文章だ。(こんな英語力なので合っているかどうかは正直分からない)
でもその時はくそ真面目にこう言ったんだ。
そして今も、基本的に私はいつもこんなことを考えている。
部屋に戻っても寝られないからと言う彼女と、そんな着地点の無い話を続けて、ベッドに戻ったのは明け方だった。
最後の最後になって、今日が最後の日だったことを思い出して「会えてよかった」って言ってハグした。
たぶん起きられないからこれが最後よね って言って。
出発の時間になっても、やっぱり彼女は起きてこなかった。
初めての国境越え。
周りに日本人は皆無で、いよいよ独りなんだなという感じを強くする。
彼女と彼がこれからも一緒にいるのがいいのか、それとも別の道を歩むのが幸せなのかは分からない。でも、
彼女には彼女の幸せが見つけられたらいいな って、カンボジアに向かうバスの中でキーボードを抱えながら、
ぼんやりとそんなことを考えていた。
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