「オタクは勝ち組」かもしれない。
先日、3年ぶりに髪を染めに行った。
産後、なかなか美容室に行く時間がとれず、毎月セルフカラーをしていたのだが、一度「バレイヤージュカラー」というものをしてみたかった。
バレイヤージュカラーとは、エアータッチという技法を使い、ドライヤーで髪の毛を飛ばしながら、ブリーチ剤で脱色する。
そこからカラーをのせ、最後にトリートメントするという、とても時間と手間、そして労力のかかる施術方法だ。
私はいい美容師に出会った。
20代で、新婚、まもなく子供が生まれるという男性の美容師だった。
その美容師は「バレイヤージュカラー」に人一倍のこだわりを持っていた。
話を聞いていると、どうやら「バレイヤージュカラーを追究する会」に入っており、そこではマニアックな会話が絶え間なく繰り広げられているという。
「久しぶりにバレイヤージュのお客様がいらっしゃって、めちゃくちゃテンション上がります!なんか俺、気持ち悪いっすね。(笑)」
彼はそう言っていたが、キラキラと目を輝かせながら、私の髪をどう煮たり焼いたりしようか考えている姿は、とても活気に溢れ、魅力的だった。
30万円のハサミを買おうか迷っていたので「絶対買った方がいい」と即答しておいた。
「嫁には内緒っすね」と笑っていたが、彼は将来、いいサロンを開業するんだろうなと思った。
ーーーそしてまた、別の日。
写真館に行った時の話である。
私はイベントの仕事を担っており、案件をいただく際に、宣材写真をクライアントに提出する。
「宣材写真を撮りたい」とメールで予約を入れたところ、「衣装もありますので是非!」と、二つ返事でレスポンスがあった。
その写真館は、大阪のはずれにある完全予約制の小さな写真館。
入室するなり「宣材写真撮りたいなんて、最近そういったお客様とても少なくて。凄く嬉しいです、ぜひぜひどうぞ」と。
話を聞くと、この写真館のオーナーG氏の原点は、「カメコ」だったらしい。
カメコとは、“カメラ小僧”の略称。
女性の写真を好み、コスプレイベントなどに撮影専門として訪れる男性を“カメラ小僧”と言い、略して「カメコ」と呼ぶ。
モーターショーやオートサロンなどの展示会で、コンパニオンの写真を撮っている人のことも「カメコ」と呼ぶ。
話を聞くと、どうすれば女の子を綺麗に撮れるのかを追究し続けた結果、それが生業となって、自宅の1階をリフォームし、現在の写真館を開業したのだそう。
写真の話をし出したらもう止まらず、たった2枚の写真を撮るために、まさかの2時間(笑)
「僕が使っている、このNikonのカメラね、本体とレンズで100万円超えなんですよ。半年待って、ようやく買えたんです。嬉しくて嬉しくて。何かもう感覚狂ってますね、僕(笑)」
と言いながらも、撮影中はとても楽しそうで、リラックスさせてくれて、わたしも楽しかった。
楽しさは伝染する。
「こんなことずっとやってたからね、僕、今婚期逃しちゃいました。でも、嫁さんや子供いたら制約も増えるし、これもいいかなって思ってます。」
と、言いながらも、やはり目は輝いていた。
「もうすぐ息子の七五三があるので、その時絶対きますね!」と約束し、退室した。
こんなことが最近続いている。
1つの分野に執着し、投資し、追究し続ける「オタク」は、魅力的だ。
活気に溢れ、とても楽しそうだった。
ーーーそれではそろそろ、伝えたいことをまとめていく。
毎日がつまらないと感じる人は特に、なにか1つだけでいいから、没頭できる、投資できる何かを追究したほうがよい。
かくいう私も追究すべき人のひとりだ。
広く浅く手をつけすぎて、何が好きなのかよく分からなくなっている。
明日からだって、全然遅くはない。
誰だって、今日が1番若い。
1つのことを追う姿は魅力的だと、子供にもしっかり、それを伝えていきたいと感じた。
とてもいい出来事だったので、ここに記しておきたい。