NCo310 (母本Co421 父本Co312)

生い立ち

  1947年,インド産まれ.しかし育ったのは南アフリカ.その後台湾に渡り.台湾経由で1951年に日本(厳密には米軍統治下)へ導入された.つまり導入育種によって普及された品種である.品種登録期間は1957年からである.やせ地で良く育ち肥沃地ではかえって単収が下がる.分げつが多く茎数型である.それまでの品種と違い高単収であんていしたためだろうかミラクルケーンという愛称で呼ばれていた.南アフリカのナタール州の「N]インドのコインバトール「Co」を組み合わせNCoと名付けられた.

時代背景

  第2次世界大戦が終わった当初,日本は食糧難であったため米軍はサトウキビ栽培を禁止,食糧生産のための農業を推奨した.サトウキビ栽培が南大東島で許可されたのは1948年になってからであった.1951年当時,沖縄本島には戦前のサトウキビ品種はほぼ残っておらず,戦後の食糧難を理由に換金作物の栽培が禁止されていた.それでも琉球政府は1963年に,重要産業育成法の中でサトウキビとパインアップルを重要物産として指定した.それから導入育種を行うと同時に沖縄本島での製糖企業の設立と交配育種の発展を目指した時代であった.このとき導入育種はハワイと台湾から行われたが最も普及され,長く使われたのがNCo310である.なお,日本での育種が再開される1964年には,普及率が99%を超えた.しかし単一品種の弊害というべきか,モザイク病が蔓延し対策として他の品種へと置き換わってゆくのである.

草型と特徴

 芽は円形で広めの芽翼がある.黄緑色の円筒型の茎で芽溝はない.近年のサトウキビに比べ柔らかく,ネズミの食害に遭いやすい.分けつが多く,主茎に並ぶ勢いで育つので単収が高くなる.未展開葉はやや直立しており,先端は横へ倒れる.展開葉は直立せず中途半端に斜めに伸びて茎に近い方からやや水平を保ちながら垂れ下がる.茎も主茎はまっすぐ伸びるが分げつはやや斜めに伸びるので,株の上ではなく畝の上の方に葉が展開しやすい.このとき葉鞘は茎から離れる傾向にあるが脱葉性は悪い.葉が最も多い位置は最上位展開葉よりも上である.



以下,参考にならない考察
 この品種はたいへん優秀で参考文献も多い.そもそもNOTEに研究内容を記すきっかけになったのもこの品種を夏植えで密植するとLAIが増えるから増収すると知ったからである.そう,LAIは密植すると簡単に増えるのだ.だがしかし,機械化とは密植とは程遠い.だからこそLAIを増やす別な手段が必要なのだ.LAIは葉数で決まる.葉数を増やすには茎数を増やすのが定石で,分げつに頼るか,密植するか,そのどちらかという事になる.一方で,本当に増やしたいのはCGRなのだ.密植できないケースでLAIとNARを両方考えなければいけないのなら,着眼点は草型だろう.つまり最低限以上の面積を確保しながらより明るく,風通しの良い圃場環境を目指すのである.
 NCo310の草型は見事なまでの逆3角形である.LAIにしてもNARにしても有利に働く要因を持っているだろうが,葉が届く範囲が狭いようにも見える.だから畝幅を狭くしない限りLAIが稼げなかったのではないだろうか.例えばもう少し葉が長ければ,例えば先端が下垂しせず横に伸びてたら.例えば茎がもう少し倒れていれば,分げつが多ければ,光利用効率はもっと高かったであろう.これまで見てきた品種の中で密植が必要なさそうな葉の広げ方をする品種もあったのではないだろうか.


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