なぜクッキーなのか ⑤【続・シングルマザーのクッキー屋の話】
⑤ Will :意思の確認 計画の策定(つづき)
クッキーにしよう、と決めた。
それを、だれがよろこぶか。
ただ、どこの誰だかわからない(有名ではない)人が作ったクッキーを、誰が買うというのか。わたしなら買わない。
ここで、(どこの)(だれに)を考えて、実店舗をかまえるリスクと費用がこわかったので(お金もない)、オンラインショップで通販(どこの)にしようと決めた。いくらぶん作れるかわかっているのに、売り先がないというのはもったいないけれど、ネット上でならあとから売り先を増やせるのもよかった。事務作業の経験もあったので苦ではなかった。(自宅の近所で格安の物件を借りられたので、店舗もつくった)
オンラインショップで販売するということは、どんなに有名なシェフがつくったものでも味やにおいは伝わらないため、実店舗とはちがう売れかたをすることを経験上知っていた。要するに見た目で決める。写真ひとつで買いたいと思うものは、見た目でつかむしかない。
また、日本にはなにかと「お菓子をあげる」という文化があり、それがとても好きなので、ギフトを販売したかった。
そこで、デコレーションをしてかわいくするアイシングクッキーに決めた。
売るものを見た目がかわいいクッキー(なにを)にしたら、ターゲット(だれに)は、近所の人でもスイーツマニアでもなく、かわいいものがすきなひとになる。それなら、雑貨的感覚で他のお菓子屋さんとの差別化をしたらいい(技術ではなくそこに力を入れる)とわかった。(アイシングクッキーをつくったことはなかったので、練習した)
ただ、アイシングクッキーだけを販売すると、手間がかかりすぎるし、ギフトにしたときの単価が上がりすぎてしまうので、ふつうのクッキー8割、アイシングクッキー2割にした。
また、「それを、だれがよろこぶか」という点において、
・地方にお住まいのお客さまがオンラインショップで買えるということでよろこばれる(そこに東京のお店という価値も入る)。
・アイシングクッキーは大手メーカーと少量しかつくれない趣味の人の2極しかなかったので、ある程度の数(数十枚から数千枚)で受注できることもよろこばれる。
・お菓子を作る仕事で、短い時間でもちゃんとお給料をもらえるので、働くひとによろこばれる。
・生産性のいい(短い時間でできる)仕事をすることで、わたしが働く時間を減らせるので、あーちんによろこばれる(わたしもうれしい)。
こうして、優先順位をひとつもゆずらず、それに沿って考えを進めてきた結果、
「オンラインショップで、全国のかわいいものすきなひとたちに、ギフトとして、アイシングクッキー2割その他のクッキー8割を販売する」
になった。
知識も能力もないわたしに唯一できたことは、「考えることをやめず、しあわせをあきらめない」ことだった。
これはわたしだけではなく、社会的に弱くても、持っているものが少なくても、誰にでもできることだと思っているので、ここに書き出して読んでもらうことでなにかの希望になれたらいいなと思う。
おしまい
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