「価値観がちがう」の失敗は、大事なものを見つけるチャンスだという話

仕事を辞めるときも、恋人と別れるときにもよく「価値観がちがう」という理由があげられるけど「なんの価値?」と聞くと、答えられないことが多い。

「選ぶものがちがうから不快」という不満のなかには、自分が譲れない大事なものがあるから、解像度を上げてちゃんと知ったほうが後々のためにいいのにな、と思う。


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たとえば仕事で、「成長を求められるのがいやだ」と不満を感じて、自分は毎日毎年同じでもよくて、とにかく穏やかに単調に働きたい、という場合、どうしてもそれが合わないし我慢できないとわかったなら、辞めて職場を変えたほうがいいと思う。

でも、それを「価値観が合わなかった」の一言で済ませたり、「あの会社がおかしい」と片付けるのはもったいないなと思う。


「大事にしているものがちがう」と気がつくのは、不快や不満やガマンをしているなかにある。

怒りも、大事なものが傷つけられたときに起こる感情なので、よく観察すると大事なものが見えるヒントになる。

「あの会社の価値観はおかしいから合わない」のではなく、「成長が大事だ」という自分とはちがう価値観のなかにいたから「わたしは穏やかに単調な作業をして、成長を求められないことが大事」だとわかったまでだ。

そして、その会社が悪いのではなく、社会的価値や一般論も関係なく、相性という問題においては、自分が大事にしたい価値観を知らずに、相性の悪い会社を選んでしまったことが「まちがい」だったということになる。


自分が大事にしたいものや譲れないものを自分で知らないと、人のせいにしてしまう。

でもほとんどがただの相性で「大事なものがちがう」だけだから、大事なものさえわかっていれば次はまちがえにくい。人のせいにしないで何を大事とするかの設定をまちがえているのは自分だと気がつくと、そのあとが楽だ。


わたしも、今までの失敗やまちがいを振りかえると、仕事でも人間関係でも恋愛でも、だいたい「大事にするものをわかっていなくて間違えて選んでしまった」だし、失敗の後は「これが大事なんだな、わたしは」と気がつく。

だから、すべての失敗について「知らなかったからまちがえたけど、今は知ったから大丈夫」と思っている。



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大事にしたいものや譲れないものを知ると、しかもそれがたくさんあったり難易度が高いことだと、ぴったりな人や職場はそうそうない。でも、そのことを知っていると「ない」ことを嘆いたり自分を責めたりしなくてすむ。

わたしも、シングルマザーだけど「時間とお金がない」ことがイヤで、どうしてもガマンできなくて、「半分の時間で、2倍稼ぐ」を譲れなかったのだけど、当然のようにそんな職場はないよね、と、しかたなく独立して自分で事業(クッキー屋)をはじめた。

自分が大事にしたいことは、それを他人や会社に求めるのではなくて、自分でどうにかしないといけないと考えたからだ。(でもそれも思い込みで、のちにガマンのひとつにもなるんだけど、それはまた別の話…)



たとえば「シングルマザーは苦労するものだ」と思い込んで、自分の大事にしたいこと(時間をつくることやお金に困らないこと)を諦めていたら、時間もお金もないことを会社や社会のせいにしていたと思う。

じつは、自分は不幸だという設定の方が人のせいにできて楽でもある。社会が悪いだけで、自分は悪くないと思えるからだ。


でも、わたしは「時間もお金も必要だ」という1点において譲らずに考えた。大事にするものの設定をして、時間を作ること(たくさんの時間働くという解決方法を選択をしない)とか、お金に困らない(短い時間でもちゃんと稼ぐ)ことを諦めずに、その後の行動を選択し続けた。

大事なのは能力ではなく、その設定だったと今でも思う。迷ったときや気が乗らないときも「これを大事にすると決めているので」と設定のせいにすらしていたような気もする。

人のせいにするかわりに、自分の決めたことに振り回されるほうがよかった。

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大事にしたいものは100人いたら100通りそれぞれちがうはずなのに、うまくやっている誰かのやり方だけをマネしてもしょうがないなと思う。

わたしの周りにもときどき、わたしの働き方の形式だけを知って取り入れようとする人がいるけど、大事なものがちがうから、やり方もちがうほうがいいよと言う。わたしはシングルマザーだけど、夫がいる人は夫がいる中で考えたらいいし、それ以外の背景や叶えたいことや性質などもちがうのだから、マネしないほうがいいよと。

わたしはわたしの大事なものを大事にするために、わたしにしかできない方法でやっているから、あなたにもあなたにしかできないことがあるでしょうと言う。


同時に、大事なものを設定するには、もっと自分のことを知らないといけないとも思う。何を大事にする人生なのかは、年齢や環境によって変化していくものだと思うので、いつも設定を決めては、ほんとにそうかな?と疑いながら、失敗してまちがいに気が付きながら、「これが大事なんだな」とひとつひとつ見つけていくしかない。

「ガマンのフタを剥がして欲をみつけるといいよ」とわたしが何度も書いているのも、大事なものを知って設定するために必要な工程だからなのだと思う。


失敗したり、まちがえちゃったときは、大事なものがわかるチャンスだから、ひとしきり落ち込んだ後は、絶好の観察タイムだよと言いたい。そうすれば、その後のいいことに必ずつながっているよと。


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桜林 直子(サクちゃん)
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