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「実家から届くダンボール」に詰めたもの

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このnoteは、LINEを使って家族や友達にギフトを贈れるサービス「LINEギフト」さんから企画の依頼を受けて執筆しました。

#ようやく気づいたありがとう 」というテーマで、母の日にお母さんとの思い出を振り返ろうという企画です。

わたしは、子を持つ母としての位置から、これから自分で世界を作っていく子どもに対してどんな思いを持っているかを書いてみることにしました。読んだみなさんのなかから、何か思い浮かぶことがあるといいなと思います。

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学生の頃、友人の家に行くと、よく部屋の端に実家から届いたダンボールがあった。お米や野菜やカップラーメンやお煎餅やらが入っていて、隙間に詰められたくしゃくしゃの新聞紙のすこし湿ったようなにおいがした。友人は「使い切れないから野菜は送らないでって言ってるんだけどね」と困ったように笑っていた。

地方から東京に出てきて、自立して都会に馴染もうとしている友人の部屋にあるダンボールは、田舎がそのままワープしてきたようで、そこだけ地元のにおいに包まれていた。そのギャップに、彼女はお母さんと離れて暮らしているんだなあと改めてわかる。

ひとり暮らしに憧れていたわたしには、羨ましくもあり、彼女が東京では見せていない部分を見てしまった気はずかしさのようなものもあった。


東京育ちで実家から学校に通っていたわたしは、実家からダンボールが届く経験をしないまま大人になったが、先日、はじめて「実家から届いたダンボール」を送る側の経験をした。

娘が18歳になり、高校を卒業して地方の大学へ進学した。ひとり暮らしがはじまるので、引越し作業を手伝うためわたしも一緒に行き、彼女の新居のワンルームで数日間を過ごした。バタバタと慌ただしく用事を済ませ、まだ慣れなくて心許ない彼女を置いて、ひとりで東京に戻ってきた。

自宅に帰ると、早速、送りそびれたものや、買い足すものがあれこれあったので、それらを送るべく荷物を用意した。そのとき、ふと、「東京に戻ったら配送で送るね」と何の気なしに言ったけれど、これは記念すべき「実家から届くダンボール」の一箱目ではないか!と思い至った。

それは大変だ、とやる気が湧いてきて、家を飛び出し、いそいそとスーパーマーケットに向かった。普段の買い物とはちがう目で、娘に送る救援物資のために商品の棚を見て回った。

狭いキッチンでつくれそうな料理を想像し、あると便利な調味料や缶詰(麻辣醤や鯖缶やツナ缶)をカゴに入れる。忙しいときにパッと食べられるものがあるといいなと、シリアルやレトルト食品(チョコワや銀座カリーの中辛や永谷園のお茶漬け)をカゴに入れる。隙間に詰める新聞紙がないので、かわりに詰めるためのかさ張るお菓子(ふんわり名人やポテトチップス)をカゴに入れる。

値段を見ずにひょいひょいとカゴに入れたので、ちょっとしたディナーくらいの金額になっていてすこし苦笑いをしたが、レジで代金を支払いながら、「わたし、大人になったんだな」と感じた。


家に帰って、買ってきたものをダンボールに入れてみると、まだすこし隙間があったので、家でつかっている入浴剤も入れた。「グーテナハト」(ドイツ語で「おやすみなさい」の意)という名の入浴剤で、「おやすみ前のリラックスバスタイムを」と書かれている。これで、夜になったら家の中が同じにおいになるなと思いを馳せる。

ダンボールを閉めようと、そこに詰まったラインナップを眺めていると、長年よく知っている感情が浮かび上がってきた。

この18年の間、子どもを育てる責任の重さに怖くて気が重くなったとき、できないことばかりで自信がなくなりそうなとき、「まあでも、ごはんを食べさせて、安心して眠れる場所をつくることさえできれば、ひとまずオッケーでしょ」と自分に言い聞かせ、「親だからこうしなければ」と上がってしまうハードルを何度も何度も下げながら進んできたことを思い出した。

18年経っても変わらず、わたしは彼女にとにかく、ごはんを食べて、安心して眠ってほしいと願っているのだ。

彼女の門出に、食べものと、睡眠と、圧倒的な祝福を。
ダンボールに詰めて送った。


日だまりを行くといい、愛することに出会うといい
あたりまえの営みを、どうかあなたは続けてね
行きたいところに行けるように、なりたい者にもなれるように
できればわたしも滅ばずに、あなたの未来のそばにいたい

(中略)

あなたの未来に祝福を
圧倒的な祝福を

bonobos『あなたは太陽』より


彼女が出発する前、桜が満開の公園で、友人のヤンスくんが家族写真を撮ってくれました。記念にここに置いておきます。

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(PHOTO by yansuKIM)

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