脳内変換

覚えている。いや、覚えていると思い込んでいた。今となっては真実が何なのか知る術はなく、数分前まで記憶と呼ばれていたものは、ただの妄想になりかけていた。

別に悪意はなかった。そもそもその頃の私の中には、善意も悪意もなかった。手の届く場所、目で見える景色だけが「今」だった私は、影の中に行ってしまった彼を確かめるために、投げた。投げると、飛んでくる。だからまた投げる。さっきよりも少し大きいのを投げる。もう少し大きいのが飛んでくる。きっとそれが嬉しかったのだ。だからとびきりのやつを投げた。ゴツンと鈍い音がして、少しだけ時間が止まった。

それから、気がついたら、とびきり大きいのが私ごと全てを包み込んでいた。

いつから言葉が石になったのか。私は悪くないと言われたけど、私はきっと悪者だった。

みんなそうじゃないと言ったけど。

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