ジョブズと愛菜ちゃん
もしもう一度人生をやり直せるならどこに戻りたい?
よく見かける問いだ。
これまでの人生を振り返ってみると
私は一貫して所属組織への帰属意識や愛着が著しく薄い人間だった(し、多分これからもそう)。
最高の仲間、とか、この組織のために!とかそんなものは芽生えず
どれだけ良い出会いがあったとしても、引退・卒業・退職の際はいつもどこか解放感を感じていた。(その都度SNSの整理もしてしまうので、所謂気の置けない友達以外はどんどん私のソーシャルネットワークから消えていく。)
さらに言えば、あんな組織に入っていなければな…という
後悔にも似た気持ちにはよくなる。
そう思うことが一番多いのはやっぱり前職。
どこかで目にした、文系学生は営業職以外選択肢がないという言葉を真に受け、わたしなんかどこにも受かるわけがないという自信のなさから、3回のクリスマスに内定が出た人材紹介会社に入社した。(そのあとコロナ禍を迎え、ウェブ選考の波に乗れなかったことも大きい)
私は一社しか経験がないけれど
人材紹介なんてもう、営業会社だ。KPIを追い、追いかけまわし、毎月リセットされる予算を達成すべく、よりたくさんの賞与を獲得すべく、とにかく我武者羅に働く。営業として求められる根性的なメンタル的なガッツ的なそのすべてが欠如していた私にとっては地獄のような毎日だった。
毎日眠れず食欲もわかず、自分とは住む世界の違う自信に満ち溢れた同僚と肩を並べ、すり減る心を見てみぬ振りしながら駆け抜けている最中、日ごろ相対するIT人材と自分を比較して、これだけ頑張っても私はやっぱり何のスキルもない人間だ…と絶望したこともあった。
挙句の果てに退職理由はセクハラとそれに伴う経営層への不信感。
なんだかすっごく心身共にけちょんけちょんにされて去ったな。
けれど外に出てみると意外と役立つことが多かった。
執行役員やら部長やらと日ごろ相対していたから
ビジネスマナーそのほかコミュニケーションは問題なく
「若いのにしっかりしている」ゼッケンを獲得できたり、
日ごろの情報量が多すぎて
その日のうちに復習をする癖がついていたおかげで
「仕事の覚えが早くて優秀」なゼッケンをもらったり、
予算達成のための戦略ネリネリを半年に一回やらされて
期中も都度都度修正するくせがついていたから
資格取得や何か始めるときにコツコツ計画的にできるようになったし、
何よりどんな相手でもまずはしっかり話を聞き受け止める(フリをすること)、そして不平不満を言わずに黙々と仕事をすることで
勝手に相手が認めてくれて、いざというときに味方になってくれる
スーパー世渡りスキルだって身についた。(これは大癖クライアントと苦手な同僚たちのおかげ)
更に、大幅キャリアチェンジを目指している今は
法人営業としてのキャリアそのものが意外と汎用性が高いと知って
安心したりもしている。
前職への感謝なんて口が裂けても言いたくないし
どう考えたって精神的トラウマのほうが強いけれど
でも前職への入社をしたこと自体は、まあ悪くなかったのかもと思えるようになってきた。(心が穏やかな時だけ)
かの有名なスティーブジョブスのかの有名なハーバード大学卒業式のスピーチでも、人生のすべてに意味があって、全く意味がなかったと思うことさえ後悔するような出来事でさえすべて今につながっていると言っていたし
どう見たって人生二回目の芦田愛菜ちゃんも
人生はすべて決まっているから、過去の自分の選択を悔いるより今を受け入れる方がいいと言っていたし
おサブもそう思えるようになった。
(むしろそう思わないと折り合いがつけられない場面も多い。)
だからやっぱり、思いをはせるのは未来のことだけにしたいし
過去は写真を振り返るような気持ちでサッと、サラッと付き合っていきたいと思う。
この先の人生、どうなるかな。
時の流れに身を任せながらも、自分で舵を取って
いい人生だったな~と思いながら死にたい。