無痛分娩で母親の重い合併症が顕著に減る(ナショナルジオグラフィック)

 興味深い記事が投稿されたのでシェアします。

 元の論文を読んではいないので、二次引用となってしまうことにご注意ください。

硬膜外麻酔を受けた場合、出産から6週間後までの間に重い合併症にかかるリスクが35%も下がることが示されたのだ。英グラスゴー大学と英ブリストル大学の研究者による論文は、2024年5月22日付けで医学誌「BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)」に発表された。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/052800291/

 無痛分娩として最も一般的な方法である硬膜外麻酔を受けた妊婦は、そうでなかった妊婦と比べて、産後の合併症にかかるリスクが顕著に低下したとのこと。

この研究ではまた、硬膜外麻酔による無痛分娩で、心臓や呼吸器の病気や妊娠高血圧腎症、帝王切開の経験、逆子や多胎、病的な肥満のある妊婦ではリスクが50%、早産の場合では47%下がることが示された。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/052800291/

 高リスク妊婦ではさらに顕著なリスク低下が見られました。

ただし、今回の研究では、新生児ではなく、母親がかかる出産合併症だけを扱っている点に注意が必要だ。調査対象となった出産に伴う「重い合併症」には、血栓、入院を必要とする敗血症などの感染症、過度の出血、子宮摘出、心不全などがある。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/052800291/

硬膜外麻酔が合併症を減らす理由のひとつはおそらく、母親のストレス反応が緩和され、「ストレスホルモンの濃度や血圧、心拍数が低下する」ためだと、カーンズ氏は説明する。また、心血管系や呼吸器系の生理的な負担が改善されることで、「基礎疾患や、まだ診断されていない疾患のある人への重要な保護」につながると、ザコウスキー氏は言う。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/052800291/?P=2

 これだけ読むととても素晴らしい発見のように思えますが、調査方法やデータの解釈はそう単純にはいかないということに注意が必要です。

 たとえば、今回の研究は英スコットランドで行われましたが、対象となった妊婦はほとんどが白人系でした。人種や文化による影響を排除することが難しいため、今回のようなデータでは全人類にあてはまるかどうかを断言はできません。

 また、麻酔そのものではなく、「出産対応チームに麻酔医が加わること」がリスク低減につながった可能性も指摘されています。

出産を見守る目が増えることや、麻酔医が持つ救急救命の技術は特に役立つだろうと、氏は指摘する。さらには、硬膜外麻酔を提供できる病院には通常、多くの合併症を予防・発見できる診断機器やモニタリング機器が備わっている。
 カーンズ氏もまた、そうした外的要因が、今回の研究結果で大きくプラスに働いた可能性がある点に同意している。さらに、硬膜外麻酔を受ける女性は、出産中に追加の水分や薬を点滴される可能性がより高いとも述べている。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/052800291/?P=2

 少子化対策として妊娠・出産に対する恐怖心や母体のリスクをなくしていくことは重要です。無痛分娩はそのための一つの手段として、今後ますます重要になっていくでしょう。

 日本では無痛分娩を選べない病院も多く、まだ一般に普及したとは言えない状況ではありますが、ぜひ国をあげて啓発に取り組んでいただきたいところです。

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