『ツノガエル』(BiOctober2021/10/5)
概要
ツノガエル科ツノガエル属の種群。属名はCeratophrysで、ceratopとはツノのこと(トリケラトプス=トライセラトップス=3本のツノ)。その名が示す通り眼の上部にツノのような突起がある。もちろんそう見えるだけで、堅くないし武器にしたりもしない。
総じて待ち伏せ型のカエルであり、壁を登るどころか歩くことも少ない。24時間じっとしていることが苦にならない性質なので、飼育に必要なスペースはかなり小さい。脚力が強いので跳ぶときに顔をぶつける危険性はあるが、カエルが手足を伸ばして届くギリギリくらいの面積があれば十分飼育は可能である。もちろん広いケージで飼ってもいいのだが、立体活動は全くしない上に床材は掘り返すし、強い力で構造物をひっくり返すのでおよそレイアウトには向かない。
ベルツノガエル、クランウェルツノガエルの2種がよく流通する。特にクランウェルツノガエルはアルビノなど多彩な色彩変異が固定されており、即売会ではカラフルな展示を見ることができる。ただし、この2種やアマゾンツノガエル・バジェットガエルなどとの種間雑種が多く作られていることは個人的にいかがなものかと思う。
ベル・クランウェルの2種はオタマジャクシからの飼育も容易である。冷凍赤虫を与えておけば恐るべきスピードで成長してかわいらしい若ガエルになるだろう。ピンポン玉にも満たないサイズから野球ボール〜ソフトボールほどのサイズ感まで育つが、前述のようにスペースは狭くてよいため飼いきれなくなることもあまりないと思われる。身動きに伴う音や鳴き声(犬に似ている)はまあまあ大きいが、そこさえ我慢できるならワンルームでも耐えられる良いペットとなるだろう。
成長したカエルに噛まれると痛い……というか流血沙汰になるので注意。カエルのくせにかなりしっかりした歯が生えており、刺さる。深い傷にはならないが、顎の力も食い意地も異常に強いため、一度食いつかれたらちょっとやそっとでは離れてくれない。傷付くのが嫌なら、世話するときには厚手のゴム手袋をしておいたほうがよい。
思い出
大学生の頃、ベルツノガエルとクランウェルツノガエル(アルビノ)をオタマジャクシから飼育していた。
例によって、なんで飼おうと思ったのかは全く覚えていないが、もともとイベントなどでよく見かけていたので印象の強い種であった。さらにオタマジャクシを通販で買えるということを知って、一気に好奇心が湧いてきたのだろう。
オタマジャクシでも数千円の買い物である。たった2匹しかいないのに脚を齧られたりしたらたまらんと、個別飼育で過保護に育てた結果、無事に2匹とも上陸して立派な成体まで育てることができた。
当時の写真がほとんど残っていない! かろうじてインスタに上げていた画像をサルベージできたが、色味などを加工しているので良くない。まあいいか。一番残っててほしかったオタマジャクシの写真は1枚もなかった。
ツノガエルには人工飼料を与えるのだが、これが毎回水で練るタイプだったので面倒だった。しかもピンセットから素直に食べるようになるまでにはかなり時間がかかり、これだったら餌付いている成体を買った方が良かったかと思ったが、まあ最終的にはバクバクと食べるようになってくれてよかった。
上の写真では小さかったベルツノガエルも大きくなり、驚くべきことにフルレッドに育った。ここまで赤いと通常個体の数倍くらいの値段になる。個人的には緑もほどよく入っていた方が好みだが……
こちらはクランウェル(ライムグリーンアルビノ)。ベルと見比べると、似た種ではあるが顔つきが違うのがよくわかる。ベルにはBrea、クランウェルにはLoviという名前をつけていたが全く由来がわからない。
一度、世話を忘れていてケージ内の水分がカラカラに乾いてしまったことがある。言うまでもなく両生類にとって乾燥は致命的な事故なのだが、なんとツノガエルは表面の皮膚を硬化させて繭のようになり、乾燥に耐えることができていた。カチカチに乾いてしまったカエルを見たときには血の気が引いたが、湿らせてやったらカップ麺のように生気を取り戻したので感心した。一度硬化した皮膚は死細胞になっているようで、ある程度ふやけたら脱皮して食ってしまう。もちろんこの生態は過酷な環境に耐えるための手段であり、多大な体力を消費すると思われるので、やらせないに越したことはない。それにしても、どこを取ってもコミカルで面白いカエルである。