2024/10月第二週のゾンビ論文 ゾンビをアシストする菌類のシミュレーション

本物のゾンビについて書かれた論文を探すべく、Googleスカラーのアラート機能を使い、ゾンビについて書かれた論文を収集している。

アラートの検索条件は次の通り。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)

「zombie」をキーワードにゾンビ論文を探しているのだが、比喩としてゾンビを使う論文も多いため、「-◯◯」で比喩としてのゾンビを扱う論文を排除している。排除したいゾンビや論文は、以下の通り。

検索条件1には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを条件2で確かめる。

今回、10/7~10/13の期間で収集し、以下の通りの論文を得た。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」四件

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」三件(条件1との重複を含めれば七件)

検索条件1は書評、情報科学、菌類学、評論が一件だった。そして、ねらいの論文が見つかった


検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」

ルーシー・スワンソン著「現代フランス・カリブ小説におけるゾンビ」

一件目。

アラート日付:10月10日
原題:The Zombie in Contemporary French Caribbean Fiction by Lucy Swanson
掲載:Modern Language Review
著者:Laura Kennedy
ジャンル:書評

題の通り、Lucy Swansonが著した『The Zombie in Contemporary French Caribbean Fiction』という本の書評。

この本の書評は以前に見たことがある。記事にもした。その時は、書評が「ゾンビアバター」という概念を取り上げていることに興味をもって記事を書いた。

今回の書評もゾンビアバターを取り上げている。そのほか、注目点もおおむね同じように見える。大きな学びこそないが、ちょっとだけ異なるため、相違点の比較により見えるものがあるかもしれない。

ジャンルは書評。


ラスト オブ サス: ゾンビ アポカリプス シミュレーション

二件目。

アラート日付:10月10日
原題:Last of Sus: a Zombie Apocalypse simulation
掲載:?
著者:William Santosaを筆頭著者として、四名
ジャンル:情報科学

SIRモデルという、感染症の伝搬を記述する数式モデルがある。SIRのうち、Iは感染者(Infected)を意味する。そして、感染者をゾンビに変更したSZRモデルが存在する。SZRモデルを説明した記事があるため、興味があればご笑覧いただきたい。

そしてこの論文は、人間とゾンビと菌類を使って感染を記述するモデルを作ったのだそうだ。もちろん、『Last of Us』から着想を得たものである。となれば、この論文は本物のゾンビを扱った論文と言えよう。よって、これをもって今回のアラートチェックを大当たりとする

ただし、論文の中身をざっと読んだ感じ、私がこれまでなじんできたSZRモデルとは違うようだ。人間とゾンビに行動パターンを作っておき、あるフィールドの中で行動させ、それぞれの挙動を調査する類のものらしい。なじみがない分読解が難しいが、それでも読むしかない。

ジャンルは情報科学。


テネシー州で Camponotus americanus (膜翅目: アリ科) に感染するOphiocordyceps kimflemingiae (hypocreales: Ophiocordycipitaceae) の最初の確認記録と生態学的観察

四件目。

アラート日付:10月13日
原題:First Confirmed Record and Ecologic Observations of Ophiocordyceps kimflemingiae (Hypocreales: Ophiocordycipitaceae) Infecting Camponotus americanus (Hymenoptera: Formicidae) in Tennessee
掲載:Journal of Entomological Science
著者:Kathleen R. Coffmanを筆頭著者として、四名
ジャンル:菌類学

アリに寄生し、アリの行動をコントロールするオフィオコルジセプス属の形態調査。Ophiocordyceps kimflemingiaeという種の調査らしい。

寄生されたアリはゾンビアリと呼ばれる。ジャンルは菌類学。


アダム・アルストンの退廃的な演出:演劇、パフォーマンス、そして資本主義の終焉 ロンドン:メシューエン演劇

五件目。

アラート日付:10月13日
原題:Adam Alston Staging Decadence: Theatre, Performance, and the Ends of Capitalism London: Methuen Drama
掲載:New Theatre Quarterly
著者:Joseph Dunne-Howrie
ジャンル:評論

アダム・アルストンという演劇作家に関する評論。退廃的な演出がゾンビを思わせるらしい。

ジャンルは評論。



検索条件2「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」

上記の条件でねらいのゾンビ論文を誤って排除していないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPC、哲学的ゾンビおよび評論系の論文は排除されるように設定してある。

いわゆる青少年の「ゾンビ」行動の増加:合成カンナビノイドの乱用に注目

アラート日付:10月12日
原題:The rise of so-called adolescent “zombie” behavior: a spotlight on synthetic cannabinoid abuse
掲載:Brazilian Journal of Psychiatry
著者:Pedro Mendonça-Ferreiraを筆頭著者として、三名
ジャンル:医学

「-drug」で排除。合成カンナビノイドという危険ドラッグの乱用が青少年の間で増えているという。キシラジンに代表されるゾンビドラッグの一種と紹介されていると想像したが、そうではないらしい。明らかにネガティブな意味合いを有するゾンビという単語を使うなと主張しているようだ。以下に該当部分を引用する。

In the literature, the term “zombie” or “zombie-like” behavior1 is used to describe SCRA users with acute effects, including disorientation and impaired motor function, along with chronic effects such as psychosis and cognitive impairment. Using a word with possible moral connotations should be problematized,6 without, however, dismissing relevant findings or even the sense of bewilderment it implies for clinicians who evaluate patients acutely intoxicated by SCRA.
(文献では、「ゾンビ」または「ゾンビのような」行動[1]という用語は、SCRA 使用者の急性の影響 (見当識障害や運動機能障害など) と慢性の影響 (精神病や認知障害など) を説明するために使用されています。道徳的な意味合いを持つ可能性のある言葉の使用は問題視されるべきですが、[6]ただし、関連する所見や、SCRA によって急性中毒になった患者を評価する臨床医が抱く当惑感さえも否定すべきではありません。)

同論文より
※SCRAは合成カンナビノイドの英語名


Mars: オープンワールド環境における状況に応じた帰納的推論

アラート日付:10月13日
原題:Mars: Situated Inductive Reasoning in an Open-World Environment
掲載:arXiv
著者:Xiaojuan Tangを筆頭著者として、五名
ジャンル:情報科学

「-network」および「-AI」で排除。Marsという、AIの機能?を試すためのオープンワールド環境がある。その環境にゾンビが設定されているため、検索に引っ掛かった。


マージ: 遠隔地での検証可能な直接投票のために、電子投票結果と本物の証拠を照合する

アラート日付:10月13日
原題:MERGE: Matching Electronic Results with Genuine Evidence for verifiable voting in person at remote locations
掲載:arXiv
著者:Ben Adidaを筆頭著者として、四名
ジャンル:情報科学

「-philosophical」および「-network」で排除。電子選挙を実現させるシステムの提案と分析。ゾンビの単語は"the phantoms-to-zombies approach"(幽霊をゾンビにするアプローチ)と"evil zombie ballot"(邪悪なゾンビ投票)にて現れる。

「幽霊をゾンビにするアプローチ」は次の論文で定義されたものらしい。

この論文によれば、まず"phantom ballot"(幽霊投票)が存在する。データに存在するが実際には存在しない投票を指す。投票用紙の数よりも投票データが多い場合に発覚するのだという。この幽霊投票は、「幽霊をゾンビにするアプローチ」により、ゾンビ投票に書き換えられる。「死んだ投票」とともに蘇らせるためにゾンビの名を冠するようだ。しかし「死んだ投票」の意味とゾンビ化させる理由がわからない。投票のシステムというよりは電子投票にシステムに関係がありそうだが…。



最後に

検索条件1は書評、情報科学、菌類学、評論が一件だった。そして、ねらいの論文が見つかった

まず、本物のゾンビを扱った(と仮定しても矛盾しない)論文が見つかったことは喜ばしい。しかもゾンビパンデミックシミュレーションでありながらも、私が知っているものとは全く別の手法を使っていそうであり、読むのが非常に楽しみだ。

また、電子投票のシステムに出てきたゾンビにも興味を引かれた。死人と幽霊とゾンビが出てきて、それらを明確に区別しているのだから面白い。死んでいれば死人。本当は存在しないのに存在するのが幽霊。死んでいるのに生きているのがゾンビ。ただ、「死」の定義が分野によって異なるため、死=存在とするケースではゾンビのみが使われて幽霊は一切現れない。ゾンビと幽霊が同時に現れるのは結構珍しいように思う。そこに興味を引かれた。

ちなみに従軍者に投票させるためのものであり、一般人にも適用可能なシステムではないらしい。



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