2025/1月第四週のゾンビ論文 ロボットは宗教的になれるか?

本物のゾンビについて書かれた論文を探すべく、Googleスカラーのアラート機能を使い、ゾンビについて書かれた論文を収集している。

アラートの検索条件は次の通り。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI -brain -horror

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative -AI」(取りこぼし確認用)

  3. 「zombie "AI"」

「zombie」をキーワードにゾンビ論文を探しているのだが、比喩としてゾンビを使う論文も多いため、「-◯◯」で比喩としてのゾンビを扱う論文を排除している。排除したいゾンビや論文は、以下の通り。

  • 「-firms」:ゾンビ企業

  • 「-philosophical」「-Chalmers」:哲学的ゾンビ

  • 「-drug」:ゾンビドラッグ

  • 「-network」:情報科学系の論文ならなんでも

  • 「-DDoS」:ゾンビPC

  • 「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬

  • 「-gender」:ジェンダー学系の論文ならなんでも

  • 「-narrative」:ゾンビ映画・小説などの評論

  • 「-AI」:人工知能を扱う情報科学系の論文

  • 「-brain」:ゾンビを彷彿とさせる容体を紹介する論文。脳神経科学や公衆衛生学、薬学など

  • 「-horror」:ゾンビをホラー映画のモンスターとして扱う評論

検索条件1には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを条件2や条件3で確かめる。

今回、1/20-1/26の期間で収集し、以下の通りの論文を得た。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI -brain -horror」一件

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative -AI」三件(条件1との重複を含めれば四件)

  3. 「zombie "AI"」43件

検索条件1は、宗教学が一件だった。


検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI -brain -horror」

アタリア・オマーとジョシュア・ルポ編『宗教、ポピュリズム、近代性:白人キリスト教ナショナリズムと人種差別に立ち向かう』

一件目。

アラート日付:1月23日
原題:Religion, Populism, and Modernity: Confronting White Christian Nationalism and Racism. Edited by Atalia Omer and Joshua Lupo. Notre Dame
掲載:Church History
著者:Randall Balmer
ジャンル:宗教学

宗教とナショナリズム。とくれば、ゾンビナショナリズムが扱われていることは間違いない。ゾンビナショナリズムとは、白人の保守的キリスト教徒が有している民族宗教ナショナリズムのことで、定期的に盛り上がってはリベラル勢にうんざりされているためにゾンビの名をつけて呼ばれている。

ちなみに、この記事が対象にしている本は過去にアラートチェック記事で扱ったことがある。そのときはゾンビナショナリズムとゾンビカトリックの解説を載せただけだった。まあ、今回も論文本文を読むことができないので、中身には触れなくてもよいだろう。



検索条件2「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative -AI」

上記の条件でねらいのゾンビ論文を誤って排除していないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPC、哲学的ゾンビを扱った論文や、AI、評論系の論文は排除されるように設定してある。

フィリピン系ゾンビ映画をクィア化する

アラート日付:1月25日
原題:Queering the Filipinx Zombie Movie
掲載:Transnational Horror: Folklore, Genre, and Cultural Politics
著者:Bliss Cua Lim
ジャンル:評論

排除キーワード不明。タイトルに「クィア」とあるし、「-gender」ではないかと思うが。論文の内容も不明。ただ、「映画をクィア化する」と聞くと嫌な予感がする。ジェンダー系評論はほぼ被害妄想みたいなところがあるので…。


ゾンビウイルスの蘇生:事実とフィクション

アラート日付:1月25日
原題:Reanimation of Zombie Virus: Facts and Fiction
掲載:Chattagram Maa-O-Shishu Hospital Medical College Journal
著者:Sanjoy Kanti Biswas
ジャンル:衛生学

排除キーワード不明。タイトルの通り、ゾンビウイルスに関する事実とフィクションを語る論文。ゾンビウイルスについて学ぶならちょうどよいかもしれない。


ブランド認知度向上におけるイベントを通じたマーケティングコミュニケーション(PTリンタス・ラヤ・テルパドゥ・ジャカルタでの文献研究)

アラート日付:1月25日
原題:Komunikasi Pemasaran melalui Event dalam Meningkatkan Brand Awareness (Studi Literatur pada PT Lintas Raya Terpadu Jakarta)
掲載:J-CEKI: Junal Cendekia Ilmiah
著者:Kiswah Fadhilah と Wahyu Utamidewi、 Luluatu Nayirohの三名
ジャンル:メディア学

排除キーワード不明。ブランドの知名度がマーケティングコミュニケーションによってどう向上するかを分析した論文。マーケティングの一環として、電車にゾンビが乗ってくるイベントがあったらしい。なお、論文はインドネシア語。



検索条件3「zombie "AI"」

検索条件2に含まれる排除キーワード「-AI」が必要以上にゾンビ論文を排除し、私の求めるゾンビ論文まで排除していないか確認する。

なお、「-AI」で排除したい論文は、大規模言語モデル(LLM)を哲学的ゾンビの一種と捉えるものやゾンビが出てくるゲームをAIにプレイさせるもの、AIのベンチマークに"zombie"というプログラムを使うものなどである。

合計43件のヒットがあり、その中にねらいの論文はなかった。

まずは、1/21の分。No.2は論文でも何でもないが…。

  1. Human–machine teaming using large language models(大規模言語モデルを用いた人間と機械の連携、情報科学)

  2. Philosophy Essay Competition Winners(哲学エッセイコンテスト受賞者、哲学)

  3. Essays on economic theory(経済理論に関するエッセイ、経済学)

  4. Efficient classifier to detect DDoS attack based on internet of things(モノのインターネットに基づく DDoS 攻撃を検出する効率的な分類器、情報工学)

  5. Movies and the Church of Baseball: Religion in the Cinema of the National Pastime(映画と野球の教会:国民的娯楽の映画における宗教、宗教学)

次に、1/23の分。「AI」で検索しているから当然ではあるが、AIを情報科学以外の分野にも応用している例が多く、ジャンルをどう決めればいいかわからない。でも異分野研究は楽しそうで良い。

  1. The Work of Art in the Age of Automated Creativity: On the autonomy of AI art(自動化された創造の時代の芸術作品:AIアートの自律性について、情報科学)

  2. Could robots become religious? Theological, Evolutionary, and Cognitive Pespectives(ロボットは宗教的になれるか?神学、進化論、認知的視点、宗教学)

  3. Detection of DDOS Attacks and Classification(DDOS攻撃の検出と分類、情報科学)

  4. The Problem of Simulated Evil(模造された悪の問題、哲学)

  5. Tech Shock and the New (Digital) Normal: Blending and Mending Higher Learning Approaches(テクノロジーショックと新しい(デジタル)標準:高等教育アプローチの融合と修正、情報工学)

  6. A pathway to empower rural resilience through rural computing: An exploratory study(農村コンピューティングを通じて農村の回復力を強化するための道筋:探索的研究、地理学)

  7. HIV co-infection is associated with increased HLA-DR expression by Mycobacterium tuberculosis-specific CD4 T cells in people with latent tuberculosis infection(HIVの同時感染は、潜在性結核感染者の結核菌特異的CD4 T細胞によるHLA-DR発現の増加と関連している。、細胞工学)

  8. Nonprofit Entry, Exit, and Implications for Sector Growth(非営利団体の参入、退出、そしてセクター成長への影響、政治学)

  9. An exploratory analysis of the DPRK cyber threat landscape using publicly available reports(公開されている報告書を用いた北朝鮮のサイバー脅威状況の探索的分析、国際政治学)

  10. The Role of Care Paradoxes in Maintaining Precariousness: A Case Study of Australia's Aged Care Work(ケアのパラドックスが不安定さを維持する役割:オーストラリアの高齢者ケア業務の事例研究、衛生学)

1/24の分。

  1. From Benign to Malign: Unintended consequences and the growth of zombie policies(良性から悪性へ:意図しない結果とゾンビ政策の拡大、政治学)

  2. Growth or Decline: Christian Virtues and Artificial Moral Advisors(成長か衰退か:キリスト教の美徳と人工的な道徳顧問、哲学)

  3. Distributed Model Exploration with EMEWS(EMEWS による分散モデル探索、情報科学)

  4. Contemplation in retreat(隠遁生活における思索、哲学)

  5. Chemical Conversations(化学会話、化学)

  6. The role of global digitalization and artificial intelligence technology development in formulating the strategic profile of innovative subsystem of the territorial socio-economic system(地域社会経済システムの革新的なサブシステムの戦略的プロファイルを策定する上でのグローバルデジタル化と人工知能技術開発の役割、社会学)

  7. Trade mark dilemmas in the Metaverse: interplay between stakeholders(メタバースにおける商標のジレンマ:利害関係者間の相互作用、経営学?)

  8. Military Ad Hoc Coalitions and Their Role in International Conflict Management: Insights from the ADHOCISM Dataset(軍事アドホック連合と国際紛争管理におけるその役割: ADHOCISM データセットからの洞察、国際政治学)

  9. Connecting Distributed Leadership and Leadership-as-Practice to Increase Understanding of Leadership as  Distributed in Healthcare Practice(分散型リーダーシップと実践としてのリーダーシップを結び付けて、医療実践における分散型リーダーシップの理解を深める、経営学)

  10. Coordination: a novel view(コーディネーション:新しい視点、?)

次に、1/25の分。No.7と10の菌類学の論文は、参考文献の著者名に"AI"や"Ai"が含まれていたために、この検索に引っ掛かっていた。東南アジア系の人間だろうか。

  1. TET2-loss enhances immediate and time-resolved IFNγ signaling responses across myeloid differentiation(TET2欠損は骨髄分化における即時および時間分解IFNγシグナル伝達応答を強化する、細胞工学)

  2. Poison-RAG: Adversarial Data Poisoning Attacks on Retrieval-Augmented Generation in Recommender Systems(毒ラグ: 推薦システムにおける検索強化生成に対する敵対的データ汚染攻撃、情報科学)

  3. Managing Metaverse Retailing: Branding, Channel and Consumer Journey(メタバース小売業の管理: ブランディング、チャネル、消費者ジャーニー、経済学)

  4. Digital storyboards: the impact of a literacy-themed coding activity on elementary student attitudes for coding(デジタルストーリーボード:識字をテーマにしたコーディング活動が小学生のコーディングに対する態度に与える影響、教育学)

  5. Raiders Take on the Oilers, Resulting in an Upset(レイダースがオイラーズと対戦、番狂わせを起こす、情報科学)

  6. The framework of macroeconomic policy in China(中国のマクロ経済政策の枠組み、経済学)

  7. An Overview of Pigmented Bioactive Products from the Genus Cordyceps(冬虫夏草属の色素性生物活性製品の概要、菌類学)

  8. Fantastic Discovery: Guidelines for Cataloging Fictional Maps(素晴らしい発見: 架空の地図をカタログ化するためのガイドライン、地理学)

  9. Stress Leveling based on Physiological Parameters(生理学的パラメータに基づくストレス平準化、生理学)

  10. Secondary Metabolites and Potential Applications of Cordyceps and Allies(冬虫夏草とその仲間の二次代謝物と潜在的用途、菌類学)

最後に、1/26の分。

  1. Encyclopedia of New Populism and Responses in the 21st Century(21世紀の新しいポピュリズムと対応の百科事典、社会学)

  2. Circadian rhythms: pervasive, and often times evasive(概日リズム:普遍的であり、しばしば曖昧である、菌類学)

  3. Perceived Morality of Robot and Human Transgressors Varies By Perceived Ability to Feel(ロボットと人間の違反者の道徳観は、感じる能力によって異なる、哲学)

  4. FREYR: A Framework for Recognizing and Executing Your Requests(FREYR: リクエストを認識して実行するためのフレームワーク、情報科学)

  5. 'Trans' forming identities: migrant workers as informal interpreters(アイデンティティを形成する「トランス」:非公式通訳としての移民労働者、社会学)

  6. Does environmental regulation promote energy market integration? Evidence from China's carbon emission trading pilot(環境規制はエネルギー市場の統合を促進するか?中国の炭素排出量取引パイロットからの証拠、国際政治学)

  7. Can green finance mitigate Dutch disease? Evidence from China(グリーンファイナンスはオランダ病を緩和できるか?中国からの証拠、経済学)

  8. Systemic IFN-I combined with topical TLR7/8 agonists promotes distant tumor suppression by c-Jun-dependent IL-12 expression in dendritic cells(全身性IFN-Iと局所性TLR7/8アゴニストの併用は、樹状細胞におけるc-Jun依存性IL-12発現による遠隔腫瘍抑制を促進する、細胞工学)



最後に

検索条件1は、宗教学が一件だった。

検索条件1と2の内容からは、唯一ゾンビウイルスのみに学びがあった。といっても、「ゾンビウイルスにはちょっと興味があるな~」くらいの非常に軽いもの。ほぼ興味がないと言っても良い。

あとは検索条件3だが、かろうじて興味を引いたのが、1/23のNo.2のAIと宗教の話。私がそもそも宗教的観点を自覚していないので、AIが信仰心を抱いたかどうかの判定手段を用いて、私自身が宗教的かどうかを知りたい。日本人はよく自ら無信仰であると堂々と宣言する。そこまでではないが、私も似たようなものだ。だが、たとえ自覚的に、積極的に何かの宗教を信仰していなくとも、何かしら宗教的な考え方…あるいは宗教に変わる規範は持っているはずなのだ。

それを、知りたい。宗教観が、私は人工知能とどう違うのか。

今回はねらいの論文は見つからなかった。

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