2023/03/21(火)のゾンビ論文
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件を「zombie -firm -company」として、四件がヒットした。四件中、感想文が二件、民族史、哲学が一件ずつだった。
また、差分を見るために「zombie」の条件でもアラートを設定しており、こちらでは追加で三件がヒットしていた。
検索キーワード「zombie -firm -company」
Conspiracy theories leech off social media users.
一件目。タイトルを直訳すると「Distributed の文献レビュー: DoS 攻撃保護」。UWIRE Textというサイトに掲載。著者はMaggie Knutte。
UWIRE Textの説明を以下に載せる。論文掲載サイトというよりはニュースサイトのようである。
そして、本論文のページへ飛ぶと、タイトルの前に”Opinion”の単語がついている。つまり、何かしらの仮説を立てて、数々の調査から仮説を検証して、事実に基づいた推論を立てる『論文』ではなく、これは『意見文』である。Googleアラートにはこういうのが引っかかるので使いにくい。以前には大学新聞のイベントのお知らせが引っかかったこともあるし、どうしたものか。
内容はNetflix のドキュメンタリー「The Social Dilemma」のレビュー。SNS中毒者について論じる意見文であるらしく、zombieの単語は"It's consuming our every being until we are mindless zombies."(私たちが心のないゾンビになるまで、それ(流行り)は私たちの存在すべてを消費しています。)の一文に現れる。
ゾンビを比喩的にのみ使っている。インターネットにうつつを抜かす人間をゾンビに例えるのは3/16の論文にもゾンビスクロールとして紹介した。
ジャンルは感想文としておこう。
Involution, Adaptation, Mutation
二件目。タイトルの直訳は「退化、適応、突然変異」。The Evolution of Horror in the Twenty-First Centuryという本のいち章。執筆者はAM Smith。
文脈なくhorrorの単語が出てきた場合は、ホラー映画を指す。ということで、ジャンルは映画感想だろう。ひとつ前の意見文に合わせて、これからは感想文というジャンルに入れることとする。
内容を閲覧できない上にタイトルから推測することも難しい。内容には立ち入らない。
“Not So Glamorous at All”: The Consequences of Fame and Celebrity Status in The Cranberries' To The Faithful Departed Buscar
三件目。タイトルの直訳は「「それほどグラマラスではない」: クランベリーズでの名声と有名人の地位の影響 忠実な出発したバスカーへ」。掲載誌はJournal of Irish Studies。著者はJosep Baró Casanovas。
Journal of Irish Studies(アイルランドに関する学問の雑誌)という粋な雑誌に掲載。ちなみにJoural of Japanese Studiesもあるようだ。アメリカの大学が刊行を務めているのは少々残念だが、日本人研究者がこういう雑誌を作ると浅薄な日本ディスにしかならないので、仕方がないところはある。
クランベリーズはアイルランドのロックバンドグループ。彼らの楽曲に「Zombie」というものがあるため、検索にヒットしたらしい。ちょっと調べてみたが、この「Zombie」には割かし複雑な背景があるようだ。
本論文の内容はクランベリーズの歴史を追い、レビューすること。zombieの単語は「『ゾンビ』で有名」という説明にしか使っていないので、内容にはこれ以上立ち入らない。
ジャンルは…さすがにアイルランド学とするわけにもいかないので、民族史としておこう。(Wikipediaの『文化人類学の諸分野』を参考に決定)
Truth and Moral Responsibility
四件目。タイトルの直訳は「真実と道徳的責任」。掲載誌はFree Will and Responsibility。著者はP. Roger Turner。
Free Will and ResponsibilityというジャーナルはPhilosophy of Actionという上位項目の下に存在している。よってジャンルは哲学。
となれば、哲学的ゾンビと思ったがどうもそうではないらしい。以下に論文の一部を引用する。
何を食べたらこんな事件を想定して論文を執筆できるのだろうか。しかもゾンビでなくとも想定できそうな事件だ。なぜわざわざゾンビで…?ゾンビが世界にはびこる場合ではなく、たとえば科学者の知らぬところで勝手に大量破壊兵器が開発されて大量の死者が出たとかでもよいではないか。
ちょっと読んでみようか。気が向いたらレビューしよう。
検索キーワード「zombie」(差分のみ紹介)
3月からはアラートのキーワードをzombieだけではなく、-firmと-companyも追加した。各単語の前のハイフンは”含まない”を意味するため、『zombieという単語を含み、かつfirmとcompanyという単語は含まない』という検索条件になっている。この節では差分を見ることを目的とするため、各論文の内容には立ち入らない。
How Zombie Economicus Is Gradually Replacing Homo Economicus
一件目。タイトルの直訳は「いかにしてゾンビ・エコノミクスがホモ・エコノミクスに徐々に取って代わりつつあるか」。eurasia reviewというニュースサイトに掲載。著者はVladimer Papava。
冒頭一行目に大変不名誉なことが書いてある。
”周知の通り、ゾンビ経済は「日本発祥」”。知りたくなかった、そんなこと…。今まで何本もゾンビ経済に関する論文を読んできた。中国、ロシア、東南アジアの国々…これらの国がすべて日本に由来する経済危機に怯えていた。日本の経済オンチが世界に迷惑をかけていた…ってコト?(日本で初めて生まれただけで、日本から輸出されたのではない可能性があるが)
companyで経済学ジャンルの論文をひっかけられたので、ねらい通り。
An Irreverent Passion
二件目。タイトルの直訳は「不遜な情熱」。掲載誌はSciencepreneurship: Science, Entrepreneurship and Sustainable Economic Growth。著者はPiero Formica。
zombieの単語が現れるのは次のフレーズ。次の一文で現れる。
firmではなくcompanyで引っかかっている。しかしcompanyは日常的にも使う単語であるため、ゾンビ企業を示すタイミングでなくとも使う可能性が高い。統一してくれないだろうか。あるいは検索キーワードを-companyから-"zombie company"に変更するべきか。
The Ultimate Guide to the Jersey Shore: Where to Eat, What to Do, and so Much More
三件目。タイトルの直訳は「ジャージー ショアの究極のガイド: どこで食事をし、何をすべきかなど」。こういうタイトルの本がある。著者はPeter Genovese。
zombieの単語はAsbury Park Zombie Walkというイベントと、Zombie Snotという飲み物の名前に現れる。ガイドだからか。そして、companyとfirmも何かしらの会社の固有名をとして出てくる。ガイドだからだ。
まとめ
「zombie -firm -company」では、四件中、感想文が二件、民族史、哲学が一件ずつだった。
差分として「zombie」では、三件だった。
今回は哲学のゾンビ論文に面白そうなものを見つけられて実りある調査となった。また、ねらい通りに-firmで経済学のゾンビ論文を排除することができた。一方でゾンビ経済の意外な過去も知ることができた。本物のゾンビ論文は見つからなかったが、論文で扱われるゾンビの幅広さを体感できて、なかなかよかったのではないか。
ということで、今日はヒットなし。