2023/11/04(土)のゾンビ論文 参考文献に潜むゾンビ
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
また、検索条件2では「-philosophical」と「-gender」という一般性の高い検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。
今回、それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」八件
「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」十件(差分は三件。十件がアラートの最大表示件数)
検索条件1,2は経済学、看護学、メディア学、情報科学、人間学、言語学、政治学、生物学が一件ずつだった。
検索条件1「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
解釈理論の指導に基づく政府活動報告のE-C解釈に関する研究
一件目。
原題:Study on the E-C interpretation of the Government Work Report under the Guidance of Interpretive Theory
掲載:Journal of Education and Educational Research
著者:Dan Zhang
ジャンル:経済学
zombieの単語は"zombie enterprise"で出てくる。"zombie enterprise"というのは、"zombie firm"や"zombie company"ゾンビ企業の呼び方の一種だが、この三つの呼び方で合計をとると12%しかないマイナーな呼び方である。
ジャンルは経済学。ゾンビ企業は経済分野の課題であるので。
我々は看護師で、囚人看守ではない
ニ件目。
原題:We Are Nurses, Not Prison Guards
掲載:Journal of Psychosocial Nursing and Mental Health Services
著者:Sharon Van Fleet
ジャンル:看護学(医学?)
zombieの単語は参考文献のタイトルにのみ出てくる。そのタイトルは"Rise of the zombie institution, the failure of mental health nursing leadership, and mental health nursing as a zombie category"(ゾンビ施設の台頭、精神保健看護のリーダーシップの失敗、ゾンビカテゴリーとしての精神保健看護)。
参考文献を引用している個所を引用するとこの論文の内容が見えてくる。
要は看護よりも監護、看護師というよりも看守のような振る舞いが問題であるらしい。そういった振る舞いを看護師がとっている施設をゾンビ施設、そのような振る舞いの犠牲者になっている患者をゾンビカテゴリーと呼んでいるのだろう。
精神病棟の患者や要介護者をベッドに縛り付けることが看護師の役割だろうか?という問題提起は昔何かで読んだことがある。そういうやつか。
ジャンルは看護学ということになるのだろうか。医学というにはちょっと違う気もするし。
後日談その3
三件目。
原題:Afterthought III
掲載:Narrating Locative Mediaの第三章
著者:Vasileios N. Delioglanis
ジャンル:メディア学
『Narrating Locative Media』の第三章のまとめが掲載されている。では第三章には何が書かれているかというと、Niantic(ポケモンGoの開発会社)の開発したゲームの分析が書かれている。ポケモンGoと同じように、実世界の地図にアプリ上でゾンビの位置を示して逃げる"Zombies, Run!"というゲームも存在するため、この「後日談」でそのゲームに触れているのだろう。
ジャンルはメディア学。掲載されている本のタイトルより。
統合されたリテラシーとデザイン活動がコーディングに対する学生の態度に及ぼす影響
四件目。
原題:The Impact of an Integrated Literacy and Design Activity on Student Attitudes Toward Coding
掲載:A Paper of The 40th International Pupils’ Attitudes Towards Technology Research Conference
著者:scott R. Bartholomewを筆頭著者として、四名
ジャンル:情報科学
プログラミングを学ぶ学生(小中学生?)がコーディングを習得するための効果的な教材のデザインを調査した論文。zombieの単語は次の文章で出てくる。
「デコ・ザ・ゾンビ」と「パット・ザ・キャット」というのは教材に出てくるキャラクター。英語教材のグリーン先生と同じものであると考えてもよいはずだ。そういったキャラクターやキャラクターのデザインがコーディング学習にどう役立つかを調査している。
ジャンルは情報科学。教育学でも良いかもしれない。思えば、情報科学の教育にゾンビを使う例は非常に多い。
アクセシブル ゲーム デー: コミュニティとの関わりを成功させる
五件目。
原題:Accessible Games Day: Building Successful Community Engagement
掲載:Human Factors in Accessibility and Assistive Technology
著者:Dabuek Ireton と Angie Brunk
ジャンル:人間学
zombieの単語は"Zombie Dice"という文字列で出てくる。そういう名前のテーブルゲームらしい。そういったゲームがコミュニケーションにどう役立つかの調査報告論文といったところだろうか。カタンで発達障害児童の教育をするというケースも何かで読んだことがあるし、わからなくもない。
ジャンルは人間学とした。何がふさわしいかわからなかったため。
マイケル・マッカラーズによるディズニー・アニメーション『ボス・ベイビー:ファミリー・ビジネス』におけるスピーチ行為
六件目。
原題:Speech Act in the Disney Animation The Boss Baby: Family Business by Michael McCullers
掲載:Bosowa Universityに提出された修士論文
著者:Thesdya Ekareski Manturino
ジャンル:言語学?
『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』に出てくる「スピーチ行為」を調査した論文。というと意味が分からないが、具体的には以下の通り。
こんな分類をして何がうれしいのか、私にはわからないが…。まあ、専門家にはわかるのだろう。ジャンルは言語学。
『ザ・ボス・ベイビー:ファミリー・ミッション』にゾンビが出てくるらしいので、検索に引っ掛かった。
ゾンビアイデア
七件目。
原題:Zombie Ideas
掲載:このタイトルの本がある
著者:Brainard Guy Peters と Maximilian Lennart Nagel
ジャンル:政治学
リンク先のアブストラクトに見覚えがあると思ったら、『学術論文に潜むゾンビたち』で引用していた。2020年の出版物がなぜ今更検索に引っ掛かったのか知らないが、ゾンビアイデアとは「政策立案において、過去に否定されたにも関わらず、現代に蘇って良いものを差し置いて採用されるアイデア」のことである。その事例を示しながら、ゾンビアイデアがなぜ蘇るのかを分析する論文である。
ジャンルは政治学。
病原体感染による宿主の行動操作
八件目。
原題:HOST BEHAVIORAL MANIPULATIONS BY PATHOGEN INFECTION
掲載:International }Journal of Science Academic Research
著者:Soyun Lee
ジャンル:生物学
zombieの単語は参考文献のタイトルのみに使われる。そのタイトルは“Behavioral mechanisms and morphological symptoms of zombie ants dying from fungal infection”(真菌感染により死亡するゾンビアリの行動機構と形態的症状)である。
その参考文献の引用部分には"Cordyceps fungi create chemicals that impact the navigation ability of their ant hosts (Hughes et al., 2011)."(コルジケプス真菌は宿主であるアリを操る効力のある化学物質を生成する)である。
ただ、この論文にはゾンビキノコ以外の事例も幅広く書かれているようだ。ちょっと興味がある。
検索条件4「zombie -firm -xylazine -biolegend」
上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬は排除されるように設定してある。
放射能を帯びた川の権利
原題:Rights of a Radioactive River
掲載:?
著者:A. Laurie Palmer
ジャンル:情報工学
「-philosophical」で排除。チェルノブイリ周りの川の放射線に関する調査?zombieの単語は参考文献の"As 'Zombie' Uranium Mines Reopen, Controversy Surrounds Grand Canyon Region"(「ゾンビ」ウラン鉱山が再開、グランドキャニオン地域をめぐる論争)という記事より。
ソーシャル メディアの使用、ソーシャル ボット リテラシー、ボットからの脅威の認識、ボットの制御の認識: モデレート型仲介モデル
原題:Social media use, social bot literacy, perceived threats from bots, and perceived bot control: a moderated-mediation model
掲載:BEHAVIOUR & INFORMATION TECHNOLOGY
著者:Wei Fang と Chen Nie
ジャンル:情報工学
「-gender」で排除。ただし、大勢の人間を集めて調査をするタイプの論文であるため、単に性別の意味でgenderが使われている。zombieの単語は"zombie follower"や"zombie fan"といった文字列で出てくる。ボットでフォロワーを水増ししていることをゾンビと表現しているようだ。
タイトルが気持ち悪いが、本物のゾンビでないことは確実であるため編集するつもりはない。
「何を持ち去り、何を残すかが重要です」: さまざまな関係者とともにパーベイシブ ゲームの変革の可能性を探る
原題:“It’s About What We Take with Us and What We Leave Behind”: Investigating the Transformative Potential of Pervasive Games with Various Stakeholders
掲載:International Conference on Interactive Digital Strorytelling
著者:Adam Jerrett
ジャンル:ゲームデザイン学
「-gender」で排除。参考文献に"gender"を含むタイトルを持つものがあるため。Googleアラートのメールによると、"Zombies, Run!"というゲームに触れているために検索に引っ掛かったようだ。
まとめ
検索条件1,2は経済学、看護学、メディア学、情報科学、人間学、言語学、政治学、生物学が一件ずつだった。
異常な数の論文がヒットした。紹介するには不適切だと考えたものは除いてあるため、実は検索条件1でも最大の十件がヒットしていた。よく排除キーワードをすり抜けて十件もヒットしたものだ。
これまでの経験からすると経済学と生物学はキーワードの設定で排除可能だが、経済学は儲けが少ない。生物学の方は「-ant」か「-fungi」で排除可能だ。12月からはそうしようか。
だがほかの論文はそうはいかない。"zombie institution"、 "zombie category"、 "Zombies, Run!"、 "Deco the Zombie"、。いったいどのようなキーワードを設定すればよいのか皆目見当がつかない。今後このような論文と付き合っていかなければならないのか。結構キツイ。
今回はねらいの論文がなかった。