化石からわかるあんなこと、こんなこと | ゆるりサイエンス#4
子どもはどうして、あんなに「うんち」が好きなのか。(食事中の各位、申し訳ない)
「うんちー!」と言ってあんなにゲラゲラ笑えるのは、一体なんなのだろう。親が微妙な顔をするのもきっと面白いのだと思うのだけれど。
そんな「うんち」大好きな子どもと楽しめるかなと、先日二冊の本を買った。『ウンチ化石学入門』(著 泉賢太郎、集英社インターナショナル)と『こっそり楽しむうんこ化石の世界』(著 土屋健、技術評論社)だ。
正直、まだ我が子には早すぎるのだが、タイトルがバカうけして引力は抜群だった。ペラペラと一緒に読んで、少なくとも我が子は「恐竜もうんちをする」「うんちが化石になることがある」「足あとの化石もある」といったことを知ったようだ。
以前はさほど興味もなかったのが、この日を境に恐竜にも少し興味が出てきた様子。狙い通りである。
じつを言うと、あわよくばいつか親の本棚から見つけ出して手に取り、恐竜や化石研究の世界に興味を持ってくれたら嬉しいなというヨコシマな思いで買った本だった。こんなに早く興味を持ってくれたのは、やはり「うんち」の力が偉大だということか。子ども向けにうんち本が多いのも道理というわけだ。
さてここで、「うんちが化石になるの?」という疑問が渦巻いている方もいるだろう。
なるのだ。ただし、全部が全部なるわけではない。恐竜のうんちが全て化石になっていたら、うんちだけの地層ができてもおかしくなさそうだが、そうはならない。ただ、想像してみてほしい。ヒト一人が、犬一匹が、そして恐竜一匹が一生でする「うんち」はどれほどの量か。恐竜の骨が一匹分は一個(一セット)しかないのに比べ、一匹の恐竜が出すうんちは圧倒的に数が多い。ウンよく化石として残ることもある。一説には、うんちの中のバクテリアが有機物を鉱物に置き換えたために、化石として残ったのではないかと言われている。
見つかった化石は誰のうんちなのか?
どんなものを食べていたのだろうか?
こうした謎を解くべく、うんち化石を真面目に研究している研究者たちがいて、そこから多くの新事実が判明してくると思うととても興味深い。
化石というと恐竜の骨やアンモナイトなどのイメージが強いが、骨や殻以外の化石というのもたくさんある。
うんち化石然り、足跡化石や巣穴化石など生き物の"痕跡"の化石が数多く発見されている。これらをまとめて、生痕化石という。
私が生痕化石を初めて知ったのは大学一年の時だった。地球科学のレポートを書くために図書館で資料を探していて、生痕化石についての本を見つけたのだったと思う。
当時、素人的な知識をもって、恐竜の骨からはせいぜい大きさくらいしかわからないと思っていたので、「移動した跡を見てどんな動きをしていたのかを知る」といった生痕化石の研究を通じて、急に太古の生き物が色鮮やかに感じられ、興味を惹かれたのだった。
正直なところ、本の内容もレポートに何を書いたのかも全く覚えてないのだが、「生痕化石すごい!」と思ったことだけは覚えている。
実際には、恐竜の骨の研究からも多くのことがわかっている。
例えばスピノサウルスという恐竜は、近年しっぽ部分の化石が発掘されたことで、尾の形やどんな筋肉のつき方をしていたかが推定され、尾を使って水中を泳いでいたと考えられるようになった。
さらに、骨密度がペンギンと同じくらい高かったことも、水中を泳いでいたという説を後押ししている。
骨からわかることもたくさんあるのだ。
ちなみに、スピノサウルスのお腹のあたりからは、酸で溶けたような魚の鱗の化石も見つかっている。これはいわば、体の外に出てくる前のうんち化石で、生痕化石の一つだ。
こうした化石の発掘と検証によって、スピノサウルスが水中を泳いで魚を食べていたであろう世界が見えてくる。
骨の化石も生痕化石も、それぞれに語る物語があり、それを丁寧に読み解いていくことで太古の世界が蘇るのだ。
さぁ、ここまで読んだあなたはきっと、化石に興味が出てきたに違いない。
そんなあなたに朗報だ。
今年の夏は、国立科学博物館で「特別展 化石ハンター展」が開催される。
化石「ハンター」展だからといって、まさかダイナソー小林の異名をとる小林快次教授(北海道大学)が展示されているはずもなく、きっと多くの化石を見ることができるはずだ。
馴染みの恐竜化石だけでなく、哺乳類化石や化石から復元された姿も展示されるようだ。
化石は格好いい。ロマンがある。特に大きな恐竜化石の迫力は格別だ。
だがそんな化石の魅力だけに留まらず、その化石から何がわかるのか? といった疑問をもって、ぜひ楽しんでほしい。
きっと今まで以上に太古の世界を楽しめるに違いない。
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