突然奪われた日常 - 離婚(3/4)
借金の完済が終わった翌朝、朝食の準備をして子供達を学校に送り出すと、在宅ワークを開始する前に妻とテーブル越しに向き合った。
19年の思い出が一気に溢れて、嗚咽が込み上げ、堪えることができなかった。それでも声を絞り出し、妻に感謝してること。幸せだったこと、またいつか一緒になりたいこと、たくさんの気持ちを伝えて、離婚届を差し出した。繰り返すが、借金は夫婦の問題であり一方的に責めることは出来ない。それでもした事は反省して更生しなければ親として子供達に顔向けできない。しかし今の妻には更生する心がない。今のままでは恐らく同じことを繰り返すだろうし、次はこんなものでは済まないかもしれない。私は大黒柱であり、子供達の親である。妻ももちろんだが、誰よりも子供を守らなくてはならない。その気持ちを強く持ち、離婚の決断をした。
妻も滅多に泣かない私を見て反省し、理解してくれているように思えたが、その数分後には眠くなったと横になり居眠りをし始めた。それをみて、病気の惨さを感じるしかなかった。ひと通り離婚届に記入、押印して私は在宅ワークを始めた。お昼前、ふと見ると妻はいなくなっていた。私は、実家の片付けに行ったのかと思ってLINEを入れると、「はあ?いかないよ。」と同じ返事がきた。やはりダメか、と八方塞がりになってきた。電話すると「後で行くよ、はいはい」とあしらわれた。
仕事を再開して子供達が学校から帰宅し、18時頃に仕事が終わる頃、妻から電話が入った。電話に出ることすら苦痛だった。電話に出ると開口一番「ねえっ!何で心配しないの!こんな時間まで帰らないのに!!!!」とまたも激昂する。私は何を言っても無駄だとわかりつつ「実家の片付けでしょ?」というと「行かないよ、面倒じゃん!」と毎度同じやりとり。そして、心配しないことを責め立て、こちらが困惑してるのをうけて、ケラケラと笑い出し、ビビらせてやったと嘲笑う。この時点で限界に達し、恐怖心も最大になっていた。いつ刺されてもおかしくないな、と。
息子が塾へ行ったあと、19時過ぎに一度帰宅した妻は錯乱状態で、よくわからないものを買い物してきて、多弁で私にひたすら話しかけ、時に責め立て確認し、デリカシーのかけらもない、まるでセックス依存症のような話を大声で娘の前で話す。それでも今日から実家へ帰り療養することをほのめかしていたが、恐らくまた嘘だろう。
私は、義母とあまり良い関係ではなかったため、これまで遠慮していたがいよいよ義母にメッセージを送った。どうすることもできない、そちらで面倒をみてくれと。妻は母にも借金の話をしていたようで、事態を理解してくれていた義母は、「みんな娘(妻)が悪いから。迷惑かけたね。子供を一番に考えて好きにしていいから」と。話は逸れるが、この借金の肩代わりについて妻は母に金づる的な事を伝えていたらしい。知れば知るほど酷い病気だ。決して常人ならそんな事は言わない。話を戻して、私は義母の言葉に悔し涙が出て辛かった。怖がってる娘をみて、その晩は義母に妻とどこかに泊まってほしいと連絡して、わかったと助け舟が出た。
私が夕飯の支度を終えると、間も無くして、義母から妻へ電話が鳴り、妻を誘ってくれてるようだった。妻は喜んで母の元へ出掛けていった。私が娘と2人で夕飯を食べてる最中、10分ほどで妻から電話が鳴り、娘に「お婆ちゃんとラーメン食べてくから、ご飯食べてて良いよ」と。すでに食べていたため、わかったよと終話。30分ほどでまたもや妻から電話が鳴る。嫌な予感しかしない。
電話に出ると、これまでにないほどの錯乱状態で、攻撃的に、かつデリカシーのかけらもない言葉をぶつけてくる。30分ほど話す途中、義母が横から抑止してくれてるが、「お母さんうるさい、黙まってて!黙れ!」と何をしでかすかわからない様子。ひとまず終話し、改めて義母にはどこかに泊まってきてほしい旨を伝えたが、程なくして妻は義母を連れて戻ってきた。泊まってきてくれると信じていたため、自宅の鍵を閉めていたが、おかまいなしに「ガシャガシャ」と扉を強引に引き、大声で「早く開けて!」と狂気的なカウントダウンを始める。私が扉を開けると、お母さんも入って、とケラケラ笑いながらリビングにくる。
妻は娘を見つけると「2階に行ってる?」と優しい声で話しかける。母性はしっかり働いてるようだった。私からも娘に2階へ上がってるよう促し、娘の姿がみえなくなると、すぐ妻はお母さんとパパはそっちに座れと命令口調で怒鳴る。そこからはまさに地獄絵図さながらで、テーブルの上に乗り、自分の性体験や私との事など義母が知る由もないことをすべてぶちまけ、自分が浮気していることなど、耳を塞ぎたくなる衝撃的な事実を大声で話し始めた。
その末、私に対して「どうすんの?愛してんの?」と。言わないと冷めるよ、と自信満々に焚き付けてくる。途中途中、義母も重症だ…と嘆き苦しんでいたのをみていた私は、「もうここで終わりにしよう」と、妻へ「俺たちはもう終わり。今ここで正式に離婚しよう。今後(再婚すること)はもうない。家からも出ていってほしい」と伝えた。妻は「あっそ。冷めた、わかった」と言って2階の娘に声をかけた途端、大声で泣きし「パパが出て行けって」といって娘を呼んだ。娘も混乱し、恐怖で大泣きする始末。どうしてこうなったんだろう。私はそれ以外に考えられなかった。
しばらくすると、突然気が晴れたように、娘に最後に一緒にお風呂に入ろうと言い出した。娘も手伝いながら家中の衣類やその他身支度をしてバッグに詰め込む。私はその間も、他人だし、キモいと言われながら義母の進言もあり2階で待機する事にした。息子の塾が終わる頃、私は車で迎えに行き、息子には今日が最後になるかもしれない。今は錯乱状態で本当にすごいから覚悟してくれと伝え自宅に戻った。息子も身支度や荷造りを手伝いながら2時間程度別れを惜しみ、妻は義母と出ていった。