独房 林檎を盗んでも、美しい鳥となり、羽ばたけるのだと、格子から漏れた太陽が口づけしてくれた。 土のように塞がれた男は、やがて唇を泳がせた。 ひととき、白い息も乱れて、奪うはずだったものを忘れた。 赤子のように、窓辺に接吻をして。
或る博士の遺言 「ある一つの中性子が ある一つの原子核のなかへ 向かうということ その完全な運動を名付けた私は あの日潰れたクローバーの幼花に 名前を贈れなかったから 街に繰り出し ちょうどいいポプラを探して 首を吊りにゆく」