買えない本屋と買わない盗人
とある本屋のレジに少女がちょこんと座っていた。14時半の昼下がり、ほとんど客のいない店内で、彼女は少し微笑んで本を読んでいた。
「お嬢ちゃん、ひとりでここ、やってんのかい?」
「いえ、父の代わりに。バイトみたいなものです」
少女はスッと本から目を外し、軽く笑ってみせた。客はへぇ、偉いねぇと言いながら一冊の小説を手に取ってレジの前に立った。
「じゃあこれ、お借りするよ」
「わざわざレジしなくていいんですよー。初めての方ですね、無期限無許可なんです、うち。勝手に取って、読んで、