【紀行記】ビールと、ブルックナーへ遡る音楽会ーードイツ・ベルリン旅行を振り返る。
今年の10月はヨーロッパへ旅行に行っていた。その旅行は基本フランス・パリを巡るものであったが、パリにある友人宅に荷物を置かせてもらい、ヨーロッパのいくつかの都市を回っていた。そのうちの1つが「ドイツ・ベルリン」である。
ドイツには、2泊3日で行っていた。観光しやすいようにと、ベルリンの中心部からそう遠くないところに宿を取り、そこを拠点に観光していた。
また日数は3日あるが、初日と最終日は飛行機に乗る必要があるため、その日は丸一日使えるわけではない。そこで行きを早い便、帰りを遅い便にすることで、なるべく観光の時間に余裕を持たせた。
ただ残念なことに、その時少し風邪をひいてしまっていた。今回のヨーロッパ旅行では、フランス・パリ、フランス・ニース、イタリア・ローマ、イタリア・フィレンツェ、ドイツ・ベルリンを回ったわけだがドイツ・ベルリンはその中で最後であった。全体で3週間の長旅、最後にこれまでの疲れが表に出たのか、鼻風邪をひいてしまったのだ。無念... ただ観光できる程度には元気でした。
ビールとソーセージ
ドイツで楽しみにしていたのは、なんといってもビールである。私はビール愛好家というわけではないが、お酒の中ではビールが一番好きである。一時期、友人たちと生ビールを露店で提供していたほどだ。なのでドイツでビールとソーセージ、大変楽しみだった。ただ先ほども言った通り体調が良くないので、飲みすぎて体調が悪化したら大変である。そのため今回の旅では、控えめでビールとソーセージを楽しんだ。(豪遊したかった… トホホ)
あとソーセージ関連で言えば、「カリー・ヴルスト」である。「ヴルスト(wurst)」とは、ドイツ語で「ソーセージ」の意味で、「カリー(Curry)」はカレーなので、「カリー・ヴルスト」は、カレー・ソーセージということだ。実際のものは、カリカリのソーセージ(柔らかいのと選べる)を切って、その上にケチャップとカレー粉をかけたものである。ドイツのファストフード店?という感じだろうか。(ここでエリア・スタディーズ『ベルリンを知るための52章』の第17章「ファストフードとスローフード 現代社会の食文化」を読む。)
音楽
ただ漠然とドイツに行きたいと思っていた。そして、強いて言うなら「ベルリンの壁」とかも行ってみたいなぁと思っていた。そんな理由で「ドイツ・ベルリン」を選んだわけだが、ベルリンのことを色々と調べると行きたいところがひょこひょこと出てくる。ベルリン・フィルハーモニーもそのひとつである。(ただこれは調べたというより、「あのベルリン・フィルって、ベルリンってつくんだからベルリンが拠点だよね」といった具合でたどり着いた)。
早速ホームページで公演日程を調べてみる。ただどうもフルオケのコンサートは予定が合わないようだ。と思っていると、たまたまオーストリア出身の音楽家ブルックナー、その生誕200周年ということで、ブルックナーの中でも珍しい弦楽五重奏の曲(「弦楽五重奏曲ヘ長調」)を演奏するコンサートが開催されるとのこと。(詳しくはこちら https://www.berliner-philharmoniker.de/en/concert/calendar/55723/ )。予算的にもちょうど良かったので、こちらのチケットを購入した。
後で分かったことだが、このコンサートは目玉のブルックナーの曲を演奏するだけではなく、それをトリにして、その前に現代と近現代の曲が一曲ずつ演奏されるという構成だった。
曲のリストは以下である。よく見ると、それぞれの作曲家の出身がドイツ語圏、またそれぞれが生きた時代を重ねると、かなり綺麗に、ブルックナーの生きた時代に遡ることができる。(つまり、最初の2曲は時代を遡るための仕掛けだったのでしょうね)
・ヴォルフガング・リーム(1952-2024)
「弦楽四重奏曲 墓(Grave for string quartet)」
・エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897-1957)
「弦楽四重奏曲第2番 変ホ長調 作品26(String Quartet No. 2 in E-flat major Op. 26)」
・アントン・ブルックナー(1824-1896)
「弦楽五重奏曲ヘ長調(String Quintet in F major)」
音楽の歴史を振り返れば、このブルックナーが生まれる前に、ベートーヴェンやモーツァルトなどの古典的な作曲家いたことになる。
この演奏を聴いて感じたことなのだが、というよりあらかじめフランスで「ルーブル美術館」「オルセー美術館」「ポンピドゥ・センター」を訪れ、西洋絵画の歴史を一通り眺めたからなのか、ブルックナーの音楽が絵画における印象派に似ているなと感じた。格式の高い音楽、つまり王宮の音楽というよりも、もっと自然の流れや、人々の感情の流れにそったような音楽な気がした。時代としても、少し被るようにも思う。そして最初の曲、リームの曲は、まさにポンピドゥ・センターに飾られているような絵画、そもそも既存の絵画の形をしていない、そんな音楽であった。「見て楽しい」「聴いて楽しい」というより、不気味さや異質さを含んだ作品、そんな感じである。
このヨーロッパ旅行では、たくさんの見るもの、食べるもの、聞くものがあった。芸術でいえば、絵画、音楽、建築を中心に見た。建築もパリにあるサヴォア邸に行くなど、近代建築の原点を見ることもできた。各芸術分野の歴史、それぞれは独自に発展しているところもあれば、時代を共有しているところがあるだろう。それを現地で体感できたのもとてもいい経験だった。