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面倒を言わず、厄介を言わず

やりがいもない仕事を疑いなくできる人間が密かに報われる。

30代半ば。この考え方になってからずいぶん楽になった気がする。

少し前、といっても数年前の自分では、まだ仕事に対しての考えに青さというか、身の程を弁えていないところがあった。

おかげで上司に3回くらい、クビが飛ぶ覚悟で啖呵を切った覚えもある。でもそれは若気の至り。ドラマの俳優がやればいいことで、冴えない一般人がやることじゃない。

いま、否が応でも仕事がないと生活ができない。守るべきものがぼくにもできた。自分の生活を守ろうと思うと、クビなんか覚悟できなくなる。

「やれ」と言われて「ハイ」とする。そしてその業務内容は非常に薄い。重箱の隅をつつくようなことが仕事の全てだ、と父は言った。その通りだ。

なので結局、文句を言わず、厄介を言わず、面倒を起こさず、やりがいを搾取され、時間を拘束されることに疑いを持たない人間がここにできあがった。

おかげで、非常にラク。なぜって、自分がしないことは、会社はそうしないでくれと思っていることだし、自分がそうしようと思ってやっていることは会社がそうあってくれと望んでいることだからだ。

そして、それをやる人間の替えはいくらでも効く。これが一番いいところだ。自分がそう思うにしても、これもラクだ。代わりはいるもの。

情熱を持って仕事をしようと思うと、つらいだけ。理想を持って生きると、目標への遠さに挫ける。今を大切に過ごそうとすると、今の何が大切なのかを見つけるところから始めないとならない。

そういうことは、もううんざりだ。

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