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愛ゆえに、不可侵な領域がある「帰れない山」
親友と疎遠になる。
それは人生に度々やってくる。
その人らしさを許容できなくなる。だけど、誰より自分がその尊さを理解している。だから距離を置かざるを得ない。
これはそんな風に、幼い頃から30年を寄り添ったり離れたりしながら別々の道を歩んだふたりの男の物語だ。
都会育ちのひ弱な少年ピエトロは、山を愛する父に連れられ、夏の休暇を毎年北イタリアのモンテ・ローザ山麓で過ごす。
そこで出会った同じ歳のブルーノは山育ちの頑強な野生児。ピエトロとは正反対ながら、毎年共に山や川を駆け回り遊ぶうちにお互いを知り、心を許しあえる友になっていく。
しかし長じるに連れ、裕福な家庭の息子で大学に進み作家を目指すモラトリアムのピエトロと、親もなく貧しい育ちの中で労働者として山に生きるブルーノの人生は離れていく。
それでもまた出会い、衝突して別れて。常に異なる人生の選択をするが、お互いが最もよき理解者であり続ける。
そしてもうひとりの登場人物、ピエトロの父。大手企業のエンジニアとして仕事中心の生活。父みたいになりたくないと反発する息子と折り合いが悪く、やがて一緒に山に上ることもなくなる。
自分とは異なる価値観や考えを持ち、愛しているのに時にわかり合えない存在。ピエトロにとって、山は親友ブルーノであり、父親でもある。
大人になったピエトロがひとりで様々な山を上る姿が美しい。
人は孤独だ。愛していても立ち入れない領域がある。それでも愛する人がいることが心を豊かにする。それがとてもよくわかるシーンだ。
ベストセラー小説の映画化。小説もポチった。