映画感想文「サン・セバスチャンへようこそ」主人公に魅力がないと持たない
初めての小説を書こうとしているモート(ウォーレス・ショーン)。
しかし、一向に筆は進まない。引退前は大学で映画を教えていたが今は暇を持て余している。つまり、無職だ。
そんな彼の妻のスー(ジーナ・ガーション)は、やり手の映画業界のプレス。モートのことは放りっぱなしで、何やら年下のイケメン映画監督といい感じだ。
そんな夫妻がスペインの観光地、サン・セバスチャンの映画祭を訪れる。そこでも相変わらず夫婦はすれ違いを重ねる。さて、結婚生活はどうなるのか。
妻の浮気を疑う割に、自分も若い女医に恋し、様々な妄想を繰り広げるモート。しかもその妄想がゴダールやフェリーニなど、過去の映画のオマージュと共に語られる。
わかる人にはわかるよね、というこの作り。いかにも、ウッディ・アレンらしい。そして、こういうスノッブなところが苦手だったと、観てから徐々に思い出した。
何しろ彼の分身と思われるモートに全く魅力がないから困った。プライドばかり高いインテリで、好意を持った女性に言い寄る勇気もなければ妻と向き合うこともできない。
情けなや。
主人公に魅力がない映画ほど辛いものはない。
惜しい。
状況が情けなくても、例えばもっと人生に立ち向かう勇気がみえれば応援できたのに。要するに生き様がどうであるか、という問題である。
ということで、プライド高い老年の中年男性が、どうやってその後の人生に立ち向かっていくかという物語。
ところどころ、かなり痛い。
思ったことはひとつ。こんな風にならないように気をつけようとしみじみ思った。