映画感想文「Here」ここに確かに存在している移民男性と中国系女性を描くベルギー映画
途中寝落ちした。
が、良い作品だった。
映像が綺麗で写真集を見ているようだ。人と人の自然な出会いやちょっとした会話のやり取りが次々と出てくる。そこに何か伏線とか意図は見られない。現実にありそうなシーンの積み重ねだ。だから、まるで誰かのプライベートを覗き見してる気分だ。
これというストーリーはない。
ベルギーの首都ブリュッセルを舞台に、建設労働者のシュテファンと中国系ベルギー人シュシュが出会い、日常を分かち合っていく過程が淡々と描かれる。
2人が恋に落ちたりはしない。いや、これからそういうことはあり得るかとしれぬが、それ以前が描かれる。そして悪者もいないし、事件も起こらない。そんな作品だ。
苔の研究者だというシュシュの仕事場である森が美しい。古い建物が残る歴史ある街というだけの認識のブリュッセルに、こんな緑に溢れた景色があるのかと驚いた。
また予告にも出てくるシーン。シュテファンが冷蔵庫の残り物でスープを作るところ。ほんとに普通の自分自身も身に覚えあるような日常のシチュエーションで笑えた。
移民労働者である彼が料理を作ること、それを周囲に振る舞うことは、生活してる感が満載で、この地に根を下ろす行為だなと感じた。
働き、料理し、食べる。これらは地に足ついた日常生活であり、生きることである。そんな生活を自分も大切にしたいと思った。
ベルギーのバス・ドゥボス監督の作品。慈愛に満ちた83分間であった。
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