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あたおか散文

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流れ落ちるままに生み落とした「あたおか」な散文たち
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2022年1月の記事一覧

何もなかったここで

言葉なんかいらないから

音だけが聴きたい

肌だけに触れてたい

背骨の数を数えて

鉛の海に飛び込めば

南国の香りで

氷山に沈む

さようなら

僕の街

水際で彷徨ったギムレットが

遠くの汽笛に泣いていた
#あたおか散文

ダメになった空が落ちてきた

私の頭が欠けちゃって

その隙間に光と闇がぬめりこんじゃって

街頭で神と悪魔の言葉を選びもせずに放つようになったなら

今と同じように私に微笑みかけてくれますか

声をひそめて嘲笑う愚民どもに傷つきもせず

一つの柱と化した私を

一つの景色としてくれますか

私もうじき
#あたおか散文

残月スイーツ

かっこよくも
可愛らしくも
美しくも
賢くも
なれなくて

奇態な醜女になりました

私を捨てて去っていく

取り残された月に言いました

醜聞を恐れて隠れても君の姿は変わらない

根絶やしにして切り刻むその荷に似合う明日があるよ

陥ちる事さえ叶わずに消えてく月が言いました
#あたおか散文

赤提灯にお似合いの

うさぎが一匹

うさぎが二匹

蛙が五匹

象が十匹

トカゲが跳ねたら

天竺まではあと半里

内臓の裏返し

水で洗ってよく干して

も一度煮たら出来上がり

カサカササラリと逃げ出しほだす

ブーゲンビリアが恋しくて

泣いて済んでりゃせわねぇわ
#あたおか散文

龍のお宿

拡張現実の卵の黄身のように

あの娘が頷くものだから

僕は居場所を失って

エルドラドの果てへ転がり落ちた

まだ見ぬ世界の終焉ばかりが広がって

崩れて落ちて壊れて朽ちる

赤黒く焦げた鍋の底

抜けたら蛇の出るそうな
#あたおか散文

天幕張って空から隠れる

殺すやら

殺されぬやら

盲いた峠

金属の鳥が夜を告げて

ガラスの靴で御百度参り

どんどんヒャラリ

ぴぃヒャラリ

針の筵で

地獄の花見

空中ブランコ

目玉の行進

ハーメルンの街へいざ踊り出ん
#あたおか散文

午前零時の反骨精神

耳を開いて

目を外す

ムソルグスキーを飾って

空を嗅ぐ

金糸雀の肌に触れ

君の言葉を舌で味わう

木の実が消えたら

うさぎの足を追う

ため息の色に

うたた寝の悦楽を想う
#あたおか散文

絡まった蛇の食らいついたもの

絡まった蛇の食らいついたもの

赤と黒

あかとくろ

アカトクロ

犬の名前はアカ

猫の名前はクロ

先月届いた紙風船に書かれた遺言は愛と名付けられ

砂漠の錆びついた貯水タンクは嫉妬と呼ばれ

焦げ付いた木靴は憎悪と呼ばれました

頭巾を被った女の子は猫背の魔女に誘われ

霧の生まれる紫の森へ消えました
#あたおか散文

総合受付で名前を呼ばれるのを待っていました

代替え品の人生を

歩いてみれば

夜気の中

鳴かぬトカゲが尻尾を落とす

だんだら坂を下ってみれば

そこが地獄の三丁目

案内板は無いなれど

終の住処と業火の抱擁
#あたおか散文

消し炭専用箱

カッサンドラに魅入られし

真朱の蝶が迷い込む

檳榔子黒の森の中

羽を休める花とてなくて

いずれ弾ける線香花火

落ちる火種が産み落とす

金糸雀色の声なき卵

いづれ孵るか孵らぬか

謎を孕んだ忘却の棺
#あたおか散文

モノクロームに足りない鍵の音

ドミソドミソドミソ

シレシレシレ

知れ

規則的に落ちる涙の薫り

子犬の濡れた匂い

まもなく霜月

霜月駅です

降り口はございません

喀血する君への想いを

青のカンバスに塗りこめて

マチエールだけが届ける

僕の言葉

シレシレシレ

知れ

翼を無くした枕の質量
#あたおか散文

33のシンドローム

緑と赤とそれから黄色

お熱がさっぱり下がりません

黄泉の国まであと半里

あなたの足跡おってさえ

辿り着きたいその寝屋に

今は誰ぞがしだらなく

横にはべっておいででしょうか

ただ勤勉に繰り返す

ため息のような背景画

虎の威をかる狐の肢体

飲まれてみれば夜気の優越
#あたおか散文

春の落涙

手首が取れてまだら虫が出てきた物ですから三階の非常階段が係長で赤3センチずれたら山桃が落ちるんですありがとうございます気にしないでくださいヤマゲラが鳴いたら駒が回って寝過ぎた坊やが馬の腹なんですどうにもおかめひょっとこで

何やってるの!あなた!
あなたが作ったのね!
#あたおか散文