なぜSAABに乗るの?(2)〜その先進性
ダウンサイジングターボの概念
今、流行りのダウンサイジングターボ。早く走るためというより、登り坂など、ここぞという時に力を出してくれたり、燃料の消費を抑えたり、という役割を持つターボです。排気量を抑えることができ、燃費も良くなり、環境にも優しくなります。
SAABは1977年に量産車として世界で初めてのターボ車を作り、そのとき既にダウンサイジングターボの考え方を取り入れていたと思われます。「なぜSAABに乗るの?(1)〜その安全哲学」でも書いたように、SAABのターボは決して速く走るためのものではありません。
いざというときにパワーを得られて、燃費も良い、そして運転して楽しい。もちろん環境性能も意識していたはずです。
森林資源が豊かで海に囲まれたスカンジナビアの厳しい気候や風土。スウェーデンの人たちは自然を守る気持ちや環境意識が高く、またロシアと対峙してきた歴史が軍需産業としての工業を発展させました。そんな中で戦後すぐに生まれた自動車メーカーのSAABによって開発された技術に、ダウンサイジングターボの考え方が盛り込まれていくことは自然なことだったのかもしれません。
SAABのEV?
2018年に、夫婦で念願のSaab Car Museumに行くことができました。そこで私たちを真っ先に出迎えてくれたのが1985年発表のコンセプトカーSAAB EV-1です。最近知ったのですが、この名前についているEVというのは、電気自動車のEVではなくexperimental vehicleだそうで、まさに未来への実験的な車となっています。
取り外し可能なガラス製ルーフには66枚の太陽電池を装着。太陽光で発生した電力は車内のベンチレーションに使われる仕組みになっていました。
なぜ充電池とモーターを使ったEVにSAABが向かわなかったのか?
私の個人的な見解ですが、SAABは当時からスウェーデンの豊かな自然から生み出されるサステナブルなエネルギーを使いたいと考えていたのではないか、と思うのです。
そのエネルギーとは植物から作られるバイオエタノール燃料です。北欧の森林資源から作られるバイオエタノールを使って化石燃料から脱却することを目指していたのです。
SAABは、2005年にスウェーデン本国で発売したSAAB9-5 Bio Powerによって、このコンセプトを実現させます。
この後SAABは、あくまでも内燃機関としてのターボ技術をさらに進化させながら、バイオエタノールエンジンと電気モーターを組み合わせた世界初のバイオエタノールハイブリッドカーを発表することになるのです。